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センチュリー 性別:男 年齢:50歳 一人称:僕 二人称:○○(名前)さん 全身を覆う甲冑とフェイスガードの下で赤く発光する義眼が特徴の男。 百年アイテムを研究する考古学者で、研究の為に訪れた国で紛争に巻き込まれ瀕死の重傷を負うも、 同じくこの国に訪れていた教団の手によって心臓部に百年アイテムを使用したサイボーグとして復活を遂げ、 利害の一致で教団に協力している。 一度死んだ身として新たな名前「センチュリー」と名乗るが、教団内では「教授」と呼ばれる事の方が多い。 穏やかで紳士的な喋り方をするが目的の為には手段を選ばない冷酷な性格でもある(ただしデュエルのルールはきちんと守る)。 使用デッキは《鉄騎龍ティアマトン》の入った【機界騎士】。 「今回は僕が行きましょう。」 「何も慌てる必要はありません。大概の問題は一杯のコーヒーを飲んでいる間に解決するものです。」 「大人しくそれ(百年アイテム)を渡してもらおうか…蹂躙しろ《星痕の機界騎士》。」
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パチュリー No.004 タイプ:ことわり 特性:トレース(相手と同じ特性になる) HP 攻撃 防御 特攻 特防 素早 70 60 60 125 135 70 ばつぐん(4倍) --- ばつぐん(2倍) おばけ/あんこく/こころ いまひとつ(1/2) ゆめ/しょうき/しんとう いまひとつ(1/4) --- こうかなし --- コスト:100(コスト技の威力:80) 覚える技 レベルアップ ちびパチェ パチェ 1 マナシールド 5 サイコショット 9 ひのこ 14 マジックコート 18 マッドショット 23 リフレクター 27 バブルこうせん 32 サイケこうせん 1 ミラーコート 1 こごえるかぜ 1 チャージ 1 ナイトヘッド 1 じこあんじ 1 エアロブラスト 1 マナチャージ 1 サイコブースト 37 ウェザーボール 40 だくりゅう 43 かえんほうしゃ 46 トライアタック 50 だいちのちから 54 エアロブラスト 58 マナチャージ 62 サイコブースト 卵 アロマセラピー すなあらし しろいきり サイコウェーブ 技マシン 03 みずのはどう 11 ちび にほんばれ 17 ちび みきり 18 ちび あまごい 22 ソーラービーム 24 10まんボルト 25 かみなり 27 ちび おんがえし 29 ちび マナバースト 32 ちび かげぶんしん 33 ちび リフレクター 35 ちび かえんほうしゃ 38 ちび だいもんじ 43 ちび ひみつのちから 44 ちび ねむる 45 ちび メロメロ 48 ちび スキルスワップ 50 マインドボム
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パチュリー9 うpろだ259 もう息が出来なかった。 我慢して、自分を叱咤して上げていた顔も、もう上がらない。 力なく垂れてしまった。 どれほど時間が経ったろう。 私の笛のような呼吸音に足音が混ざる。 レミィのものとは違う、重いそれ。 床を踏みしめて、近づく足音。 気持ちが溢れる。 ――嬉しい。 また、涙がこみ上げてきた。 さっきまでの物とは違う。 ぽん。と、私の頭に手が載せられた。 大きな、暖かな、優しい手だった。 「…………○○…っ……!」 「……貴方は……それでいいのね」 レミィが語りかける。 私に向けてではなく、○○に向けて。 彼女にしては、厳しい感情を込めたその言葉。 疑問を持たないでもない。 だけど、今はこの手のぬくもりを確かにしておきたかった。 私は疑問を頭の隅に追いやる。 それはすぐに幸せという名の霧に飲まれて、見えなくなった。 「…………そう。なら、いいわ。好きになさい」 そう言ってレミィは部屋を出て行った。 私は、知らない。 彼女が○○の何を知っているのか。 ○○は彼女に何を言われたのか。 私は知らない。 ただ。 「…パチュリー…………ごめんな…………」 ○○の言葉が。 酷く胸に痛かった。 ↓↓↓ 数年の時が経ち、私と○○の距離は縮まっていた。 有り体に言えば両思いということになる。 それでよかった。 私が望んだこと、それが叶っているのだから。 幸せだ、幸せだ。 「パチュリー? どうした、体調でも悪いか?」 いつしか○○は私を気遣うようになっていた。 それは優しさからきているのだと、思う。 ○○の持つ優しさ。 それが私に、私だけに向いている。 なんて嬉しいことだろう。 なんて誇らしいんだろう。 今でもまだ、彼の優しさに触れるたび、頬がほころぶ。 「ん、大丈夫よ。心配性ね」 「ほっとけ。……ゴホッ」 「ほらほら、私より○○の方が不健康そうじゃない。今日はもう休みなさいよ」 「ああ、もうちょっとだけな」 「ほんとに? 無理してないわよね?」 「大丈夫だって。パチュリーじゃないんだから」 「もう! また人を馬鹿にして!」 「ははは。すぐに終わるから、待ってな。少し散歩しよう」 そう言って、笑いながら去っていく。 その背中に、「うん」と返事をして、私は本に向かった。 最近、本に触っている時間が減ってきている。 本に触るよりは、○○と話している。 本を見るよりは、○○の姿を追っている。 こんなにも、こんなにも私が彼を。 愛すと。 そんなこと思わなかった。 でも、でも。 もっと、もっと。 彼と触れ合いたい。 彼を知りたい。 彼の全てを、私の全てを。 知りたい。 「おーい、パチュリー? 行こうぜ」 「うん」 ドアから○○が顔を覗かせる。 軽く返事をしてから、私は本を閉じた。 さよなら、私はもう貴方達とは別の世界にいるの。 閉じこもって、一人枕を濡らしていた頃とは違うの。 さよなら、私はもっと幸せな世界に行くの。 ○○と一緒に。 ↓↓↓ 「なあ、パチュリー。愛は永遠の物だって信じるか?」 「突然何よ……。まあ、その意見には賛成だけど」 「聞いてみたかっただけさ。気にするな」 紅魔館の庭を一緒に歩く。 大きくて、暖かくて、優しい○○の手を握って。 彼のもう一方の手には、一冊の本があった。 手の平からほんの少しはみ出す位の大きさ。 ○○のいた世界では単行本というらしい。 図書館にも、いくつかそんな形の本を見たことがある。 手にとって、読んだことは無いが。 ○○が読んだことがある、それでいて面白いという本を彼は持っている。 題名は『Lie』 「うそ? 騙したわね……」 「おいおい、何を騙すってんだ。とにかく、読んでみろよ。面白いぜ」 「……真っ白とか、そういうのじゃないわよね」 恐る恐る表紙に手をかける。 軽いタッチの、女子と男子の絵が目に入る。 色のついた絵が4ページほど続き、やっと題名が現れた。 そこで私は単行本を閉じる。 「…ライトノベルって言うんだ」 「ふうん、面白くなさそうね。いかにも陳腐だわ」 「そ、そうか……? で、でもさ、読んでみたら面白いってのもあかるかもしれないぜ?」 「ないわね。つまらない物はどこまでいってもつまらないもの」 目に見えて○○が肩を落とす。 相当気に入っていたらしい。 それを切り捨てられて落ち込んでる――? 少し、罪悪感を感じた私は 「まあ、時間があったら読んであげてもいいわよ」 と、言っておく。 「ま、まじか。サンキュ、パチュリー」 「ちょ、ちょっと、だからって抱き付かないでよ! 恥ずかしい…」 「あはは、パチュリーのほっぺたはぷにぷにしてるなぁ」 「もう! ふざけないで!」 ぱしゃり。 シャッターの音と、閃光がじゃれ合う私たちを包んだ。 光の方を向けば、カメラを構えた鴉天狗。 ニヤニヤと笑っている。 恥ずかしさにたまらず私は弾幕を張る。 それに巻き込まれた○○が悲鳴を上げて逃げ回る。 鴉天狗がそれをまた写真に収める。 きっと、明日の朝刊を飾るに違いない。 「そろそろ弾幕消してくれよ、パチュリー!」 「面白いからもうちょっとだけ、ね」 「こんな所だけかわいこぶるな!」 「失礼だこと。もうちょっと増やそうかしら」 「うわああ、許してくれパチュリー!」 今晩は腕枕でもしてもらおう。 私はそう一人きめて、逃げ惑う○○を眺めた。 ↓↓↓ 夜、私の部屋。 枕元に陣取る本の山を片付けて、○○の入るスペースを確保した。 意外と多いことに私は驚く。いやはや、本の虫とはよく言ったものだ。 私は本を食べて生きているわけではない。 きっと、幸せを食べて生きている。 生きている幸せ。 発作が起きない幸せ。 ――○○がいる幸せ。 きっと、それが幸せ。 「パチュリー、俺風呂入ってくるな」 「え、まだ入ってなかったの?」 「ああ、時間取れなくてな。パチュリーはもう入っただろ?」 「ええ、はいっ――――入ってない!」 「ええ? 俺はともかく何でパチュリーが」 「入ってないの!」 自分でもよくわからなかった。 なんでこんなことを叫んだのか。 勢いに乗った口は、私の意思に反して言葉を発し続ける。 ああもう、恥ずかしい。 なのに止まらない。 「――だから、一緒に入ろう!」 「……………………………………………は!?」 「ああもう! 何回も言わせないで! その……、一緒にお風呂に入ろうって言ってるの!!」 「…………えーと、パチュリーさん? 自分の言ってる意味がお分かりで?」 もうこうなるとやけだ。 私は衣装棚に飛びつくや否や、着替えを手早く纏める。 もちろん、下着も何もかも全て含めて。 魂を抜かれたかのように――本当に抜かれているのかもしれない。さっきから反応が全く無い――突っ立っている○○の手をとり、 冷たい廊下へと駆け出した。 ↓↓↓ 人のいなくなった脱衣所はとても寂しいものだ。 ただ広いだけ。 ただあるだけ。 冷え切った空気はただ肌に突き刺さるだけ。 包み込むような暖かさなど持たない。 「……パチュリー」 それでも、人が入浴という行為に焦がれるのは何故だろう。 それはやはり、入浴という行為は、母親の胎内に似た感覚をもたらすからだと私は思う。 どうしようもない郷愁に駆られるのだ。 だから人は肌を湯に浸す。 入浴とは、二度と戻れない、桃源郷への帰り道なのだ。 「パチュリー」 ただ、その道は何処へも通じていない。 繋がっている所を強いてあげるならば、そのは黄泉の国だ。 二度と戻れない、とは二重の意味を持つことになる。 一方は二度とは戻れない理想郷を。 一方は二度とは戻れない現実世界を指す。 どちらを選ぶかは、入浴をするものが選べるものではない。 「パチュリー!」 一度入ってしまえば、行くか戻るか二者択一。 どちらの道を行くかは決められない。 完全に運任せのロシアンルーレット。 当たるか外れるか。 そんな危険極まりない橋の上を、人は渡るのだ。 「パチュリー!!」 「…………なによ」 「何で俺はお前と一緒に風呂入ってるんだ!?」 「いいじゃない、たまには」 「だからって――」 「はいはい、黙って後ろ向く」 ああ――、私も実は恥ずかしい。 必死に無意味なことを考えて、気持ちを逸らしてきたというのに。 この○○は、それこそ無意味なことをしてくれる。 ああ、本当に! 恥ずかしい! 何で私は○○の背中に触れているのだろう!? タオル越しとはいえ、ひしひしと伝わってくるその肌の温もり。 硬い筋肉の感触。こんなに彼は強い体つきだった。 そして、脈打つ心臓。私の心臓と同じ。 早く、熱く。 一緒に刻むビート。 「……パチュリー」 「なによっ!」 「……………………近づきすぎ。当たってる」 「――――っ!」 脳があわ立つ。 言われてみれば、私の体は○○の背中に当たっている。 密着、というほどではないが、確かに当たっている。 密かに思う。○○に襲われやしないか、と。 まあ、それはそれでいいか。 開き直った私は、そのままの姿勢で○○の背中をタオルでこする。 そういえば、彼の背中を洗っていたのだった。すっかり忘れていた。 そして気付く。 「ねえ、○○? 痩せた?」 「――――どうしてそう思うんだ?」 「何となく……骨ばった感じがするわ。うん、絶対痩せてる」 「…………そうか」 シン。 無言の世界が訪れる。 もうもうと立ち上る湯気さえ、温度を失ってしまったかのようだ。 思わず、手が止まる。 縮こまってしまった○○の背に、問いかけても返事は無い。 ぺたぺたと、何かが這い寄る音が聞こえる。 私と、丸々の世界を壊す何か。 怖い怖い。 怖い! 「○○! ねえ、どうしたの!? ○○!!」 「――ああ、ごめんな」 困ったような声音。 とても、とてもとても、胸に突き刺さる。 その声は消え入るようなか細い声で、彼がどこか遠くに行ってしまったかのような。 そんな感じがした。 怖い。どこかに行ってしまいそうだ。 彼は、何処へ向かおうとしているのだろうか。 少なくとも、理想郷ではない。 なら――。 「――いやっ!!」 悲鳴を上げた。誰が? 私だ。 狂ったように、○○の背中に抱きついていた。 自分がなにをしているのか、分からなかった。 だけど、こうしていないと彼がどこかへ行ってしまいそうで。 それがとてつもなく怖くて。 彼がどこかへ行ってしまったら、私はどうやって生きればいいのだろうか。 一人は嫌だ。一人は怖い。 だから、今腕の中にあるこの温もりを失くしたくない。 「……パチュリー。大丈夫だから、俺はどこにも行かない、大丈夫」 優しく○○が私に声をかける。 それでも、それは。 今にも消えそうな、小さな声だった。 その声が腕をすり抜ける感触がする気がして、私はさらに言葉を紡ぐ。 「○○……怖いよ。どこにも行かないわよね? ずっと私の傍にいてくれるのよね!?」 「ああ、どこにも行かない。ずっとパチュリーの傍にいる」 ゆっくりと○○の身体が私のほうを向く。 見あげた瞳は優しく光っていて、暖かだった。 自分の立場も忘れて、○○に抱きつく。 大きな、暖かで、優しい手が私の頭を撫でる。 あの日のように。 「…………○○…さん? パチュリー様?」 「「~~~~っ!!」」 不意に、声がした。 私と、○○以外の、誰か。 固まりかけた視線を向ければ、タオルで体を覆った門番の姿。 怪訝な視線を私たちに向けている。 再び、頭があわ立つ。 大変な所を見られた。 どうしよう、どうしよう。 どうしようどうしようどうしようどうしよう。 「――――ロイヤルフレアああああああああああ!!」 「待てパチュリー俺が巻き込まれるっ!!」 ↓↓↓ 「ふぅ…………」 肩が重い。 魔道書を自身の手で書き写すことは、持ち主自身の魔力を増幅させる。それを書いた魔術師を理解することにつながるからだ。 それゆえ、多くの魔道書には手写しによるコピーが存在する。 そして今、私はそのコピーを作り出している真っ最中だった。 最近、魔力が落ちてきているような気がしてならない。 何気ない、ふとした瞬間、力がないような錯覚を覚える。 試しにスペルカードを発動させると、きちんと精霊を使役できるのだが……どうしても不安感が拭えない。 まさか、魔法が使えなくなる? そんな不安を掻き消すため、私は魔道書を必死に書き写していた。 「――と、インクが切れちゃったわね…。○○、そこのインク瓶取ってくれない?」 藁半紙を走るペンが、色をなくした。ただ、インクが切れただけ、ただそれだけだ。 インク瓶のそばに居た○○に、声をかける。 「おう」と返事をし、○○はインク瓶を握り締めた。 ――ゴドン。 そしてインク瓶が、机の上に転がる。黒い染みが津波のように机の上を這う。 ○○は驚いたように自分の手の平を見つめている。 その表情は、何かを酷く怖れているように見えた。 かたかたと○○の肩が小さく震えている。なぜ……? 私の視線に気づいた○○が、弱々しく笑みを浮かべる。 「は…はは…………手が滑っちまった…。はは、ははは…」 「ど、どうかしたの? 真っ青よ…?」 「いや、何でもない。ああ、ほら手洗ってくるよ」 そう言って足早に部屋を出ようとする。 真っ青な、人がするような顔色でない、死人のような顔色…………。 ――死人!? 自分の言葉に背筋が凍る。嫌な予感がする、途轍もない嫌な予感が。 机を叩いて立ち上がる。思わず叫んでいた。 「私も付いていく」と。 「来るな」 「だってそんな死にそうな顔して……」 「来るなと言ったっ!!」 叫んで○○が部屋を出て行った。 まさか、○○があんな声を出すなんて、正直怖かった。 力なく椅子に腰を下ろす。天井を見上げて目を閉じる。 わからない、彼の考えていることが。私だってもう、分かってるのに。 その身に何かを患っていること、もう彼が長くないこと。 なのに……。 「そばに居させてくれないのね…………」 そっと、古い引き出しを開けるように、思い出す。 彼がこの紅魔館に居つくようになった時のこと。 この図書館に彼が居つくようになったときのこと。 私が――彼を好きになった瞬間。 『じゃあ――ここにいる?』 『え? 俺……何も出来ないから…』 『話し相手にでもなってくれればいいわ』 ↓↓↓ 本棚の影からまろび出てきたのは、一人の男だった。 その姿は、知っている。レミィが食料だと言って、何処からか仕入れてきたものだ。 それが何故ここに、とは思った。けれど、憔悴しきった彼の様子には、小動物のような可愛さがあった。 哀れみを感じた、と言えば、それはそれで間違ってはいないのだけれど。 「あ…あんたは……人間か…………?」 「魔女が含まれるならね。……どう、紅茶でも飲んでいかない?」 「……………………」 「焼き菓子もあるわよ。と、言うより、貴方は淑女のティータイムを邪魔して詫びの一つも入れないのかしら」 おずおずと、男は椅子に腰を下ろした。 私は手を叩いて、リトルを呼ぶ。本棚の向こうから間の抜けた声が返ると、間も無くリトルが姿を見せた。 その姿に、男が驚く。そして、リトルがくすくすと笑った。 何せ悪魔なのだ、人間の怖がる姿を見て喜ぶのも仕方あるまい。 「彼に紅茶を。あと、何かお菓子を持ってきて」 「承知しました」 恭しくリトルが飛び去る。普段はそんな事しないくせに、この色魔が。 男のほうに目をやると、椅子の上で小さく縮こまったままになっていた。 「そんなに怖がらなくてもいいのに。彼女はそんなに悪い子じゃないわ」 「…………だって、」 「種族が違うのだもの、怖いのは仕方がないと思うわ。でも、だからって、無下に拒絶することは無いと思うのだけど」 「――…………」 また、本棚の向こうからリトルが現れた。手には、香り立つ紅茶。 男の前にコトリとおいて、一歩下がる。 「どうぞ、召し上がれ」 男がリトルの方を窺いながら、ティーカップに口をつける。 その目が、驚くように少し開かれる。 「美味しい……」 「…恐悦至極に存じ上げます」 「そういえば、名前聞いてなかったわね。貴方、名前は?」 「……○○…です。貴女は…?」 「パチュリー、パチュリー・ノーレッジ。パチェって呼んでも構わないわよ。あと、この子はリトル」 リトルが腰を折る。今まで、見たことも無いような丁寧さだ。この色魔め。 男――○○がそれに応じて、頭を下げた。 ああ――。 私は思う。 この人間は羨ましい。私にないものをきっと持っている。 私がなくしたものを、きっとまだ持っている。 コクコクと、紅い茶を飲み下す様を見て思う。 ああ――、なんて人間は愛おしい存在なのだろう。 だから、私は彼を近くに欲しがった。 もしかすると、私は彼が欲しかったのではなく、彼の持つ何かが欲しかったのかもしれない。 何れにせよ、途中から彼を本当に欲しがっていたことは間違いないのだけれど。 「○○、無理させてたのかしら。私が、貴方に甘えて、貴方に無理をさせてたのかしら」 きっと、彼なら「そんなことはないさ」って言ってくれるだろう。 彼は、優しいのだ。本当に、本当の意味で、優しい。 それ故に、きっと、いろいろと背負い込みすぎた。 レミィはこのことを分かっていたのだろうか。彼の命に限りがあること。 いや、それ自体は誰でも分かるだろう。私でも、リトルにも、レミィでさえ、いつかその命の灯が消える。 そんなこと分かっている。分かっているけれど……。 流れる涙を止めることはできない。 「今まで助けてもらった分、甘えさせてくれた分、返すわ」 貴方の命は私が助ける。 そう心に決めて、ベッドに眠る○○の唇にキスをした。 ↓↓↓ 「パチェ」 「…○○? 何やってるの、身体が冷えるわ。ほら、早く入って」 自室にいると、時折○○が訊ねてくることがある。 私と彼は、もう一緒の場所で寝起きしていない。 図書館は彼の身体に悪い。そう言って、出て行くように仕向けたのは私自身だ。 寂しくは無い、いつ何時でも彼を感じていられるからだ。 こうやって、彼のために薬の研究をしている時だって。 「○○、調子はどう?」 「こうやってここにいることが答えにならないか?」 「…………そうね」 彼がこうやって私のところに来たのはもう半年ぶり、いやそれ以上だ。 段々と、彼が床にいる時間は長くなっている。 初めの頃は一日おきに私のところに来ていた。 それが一週間ごとになり、一月ごとになり、二ヶ月ごとになり……。 次は何時来れるのだろうか、それが気になる。それとも――。 「まさか、ね」頭を振って、嫌な考えを振り払う。 「パチェ、今日の薬はあるのか?」 「ええ……ちょっと待って」 紫色の液体を、ベッドに座る○○に差し出す。 ○○はそれを「パチェ色だな」といって飲み下した。 頬が赤くなるのが分かる。○○を振り向くと、確信犯的な笑みを浮かべてこちらを見ていた。おのれ、○○。 それにしても、私は何て無力なのだろう。 図書館の主だ、大賢者だと言われても、こうして目の前にいる愛しい人さえ救えないのだから笑ってしまう。 苦笑する私の頭に、手が置かれた。誰の、とも言う必要などない。 こんなに大きな、暖かな、優しい手は○○以外の誰が持っているというのか。 「パチェ、俺を気遣ってくれるのは嬉しいけどな。お前が身体壊してちゃ笑い話にもならないぜ?」 「○○は…………私に何か要求しようとか思わないの?」 「こうやって薬貰ってるじゃないか」 「そうじゃなくて。もっと、こうして欲しいとか、ないの? 私、貴方に甘えてばかりで…………」 「よしよし、そんなに悲しそうな声出すな」 ○○が私の頭を撫でる。 手の平から伝わる暖かさが、心に染み入って、これから先を思わせて。 涙が出る。 ○○の手を胸に抱いた。泣いてはいけないと、頭では分かっているのに、どうしても涙が止まらなかった。 出来ることなら「死なないで」と叫びたかった。 大きな声でそう言えたら、そう泣けたら、どれだけ楽になるのだろう。 でも、それは許されない。○○が泣かないのだから。 助けると、言った私が泣いてどうする。そう自分を叱咤した。 「なあ、パチェ? やっぱり、俺もお前に甘えていいか?」 「う…うん! うんうん!」 「じゃあさ、今日一緒にねないか?」 …………はいい!? ねるって、ねるって……! ○○を見あげると、照れくさそうに笑って、後ろ頭をかいている。 「○○……ねるって…。そのベッドで?」 「ああ、一々図書館まで戻るのか?」 「二人きりで?」 「もちろん。それとも、大人数の方が趣味なのか?」 「え……あ……う……うう…………むきゅうぅ……………………」 「あ、おい、パチェ!?」 視界の端で○○が手を伸ばしている。 けれど、それよりの早く私の身体は床に倒れこんでいた。 これからきっと私と○○は、一時の甘い夢を見る。 ――つかの間の。そして、最後の。 ─────────────────────────────────────────────────────────── うpろだ268 「ふぅ…………」 肩が重い。 魔道書を自身の手で書き写すことは、持ち主自身の魔力を増幅させる。それを書いた魔術師を理解することにつながるからだ。 それゆえ、多くの魔道書には手写しによるコピーが存在する。 そして今、私はそのコピーを作り出している真っ最中だった。 最近、魔力が落ちてきているような気がしてならない。 何気ない、ふとした瞬間、力がないような錯覚を覚える。 試しにスペルカードを発動させると、きちんと精霊を使役できるのだが……どうしても不安感が拭えない。 まさか、魔法が使えなくなる? そんな不安を掻き消すため、私は魔道書を必死に書き写していた。 「――と、インクが切れちゃったわね…。○○、そこのインク瓶取ってくれない?」 藁半紙を走るペンが、色をなくした。ただ、インクが切れただけ、ただそれだけだ。 インク瓶のそばに居た○○に、声をかける。 「おう」と返事をし、○○はインク瓶を握り締めた。 ――ゴドン。 そしてインク瓶が、机の上に転がる。黒い染みが津波のように机の上を這う。 ○○は驚いたように自分の手の平を見つめている。 その表情は、何かを酷く怖れているように見えた。 かたかたと○○の肩が小さく震えている。なぜ……? 私の視線に気づいた○○が、弱々しく笑みを浮かべる。 「は…はは…………手が滑っちまった…。はは、ははは…」 「ど、どうかしたの? 真っ青よ…?」 「いや、何でもない。ああ、ほら手洗ってくるよ」 そう言って足早に部屋を出ようとする。 真っ青な、人がするような顔色でない、死人のような顔色…………。 ――死人!? 自分の言葉に背筋が凍る。嫌な予感がする、途轍もない嫌な予感が。 机を叩いて立ち上がる。思わず叫んでいた。 「私も付いていく」と。 「来るな」 「だってそんな死にそうな顔して……」 「来るなと言ったっ!!」 叫んで○○が部屋を出て行った。 まさか、○○があんな声を出すなんて、正直怖かった。 力なく椅子に腰を下ろす。天井を見上げて目を閉じる。 わからない、彼の考えていることが。私だってもう、分かってるのに。 その身に何かを患っていること、もう彼が長くないこと。 なのに……。 「そばに居させてくれないのね…………」 そっと、古い引き出しを開けるように、思い出す。 彼がこの紅魔館に居つくようになった時のこと。 この図書館に彼が居つくようになったときのこと。 私が――彼を好きになった瞬間。 『じゃあ――ここにいる?』 『え? 俺……何も出来ないから…』 『話し相手にでもなってくれればいいわ』 ↓↓↓ 本棚の影からまろび出てきたのは、一人の男だった。 その姿は、知っている。レミィが食料だと言って、何処からか仕入れてきたものだ。 それが何故ここに、とは思った。けれど、憔悴しきった彼の様子には、小動物のような可愛さがあった。 哀れみを感じた、と言えば、それはそれで間違ってはいないのだけれど。 「あ…あんたは……人間か…………?」 「魔女が含まれるならね。……どう、紅茶でも飲んでいかない?」 「……………………」 「焼き菓子もあるわよ。と、言うより、貴方は淑女のティータイムを邪魔して詫びの一つも入れないのかしら」 おずおずと、男は椅子に腰を下ろした。 私は手を叩いて、リトルを呼ぶ。本棚の向こうから間の抜けた声が返ると、間も無くリトルが姿を見せた。 その姿に、男が驚く。そして、リトルがくすくすと笑った。 何せ悪魔なのだ、人間の怖がる姿を見て喜ぶのも仕方あるまい。 「彼に紅茶を。あと、何かお菓子を持ってきて」 「承知しました」 恭しくリトルが飛び去る。普段はそんな事しないくせに、この色魔が。 男のほうに目をやると、椅子の上で小さく縮こまったままになっていた。 「そんなに怖がらなくてもいいのに。彼女はそんなに悪い子じゃないわ」 「…………だって、」 「種族が違うのだもの、怖いのは仕方がないと思うわ。でも、だからって、無下に拒絶することは無いと思うのだけど」 「――…………」 また、本棚の向こうからリトルが現れた。手には、香り立つ紅茶。 男の前にコトリとおいて、一歩下がる。 「どうぞ、召し上がれ」 男がリトルの方を窺いながら、ティーカップに口をつける。 その目が、驚くように少し開かれる。 「美味しい……」 「…恐悦至極に存じ上げます」 「そういえば、名前聞いてなかったわね。貴方、名前は?」 「……○○…です。貴女は…?」 「パチュリー、パチュリー・ノーレッジ。パチェって呼んでも構わないわよ。あと、この子はリトル」 リトルが腰を折る。今まで、見たことも無いような丁寧さだ。この色魔め。 男――○○がそれに応じて、頭を下げた。 ああ――。 私は思う。 この人間は羨ましい。私にないものをきっと持っている。 私がなくしたものを、きっとまだ持っている。 コクコクと、紅い茶を飲み下す様を見て思う。 ああ――、なんて人間は愛おしい存在なのだろう。 だから、私は彼を近くに欲しがった。 もしかすると、私は彼が欲しかったのではなく、彼の持つ何かが欲しかったのかもしれない。 何れにせよ、途中から彼を本当に欲しがっていたことは間違いないのだけれど。 「○○、無理させてたのかしら。私が、貴方に甘えて、貴方に無理をさせてたのかしら」 きっと、彼なら「そんなことはないさ」って言ってくれるだろう。 彼は、優しいのだ。本当に、本当の意味で、優しい。 それ故に、きっと、いろいろと背負い込みすぎた。 レミィはこのことを分かっていたのだろうか。彼の命に限りがあること。 いや、それ自体は誰でも分かるだろう。私でも、リトルにも、レミィでさえ、いつかその命の灯が消える。 そんなこと分かっている。分かっているけれど……。 流れる涙を止めることはできない。 「今まで助けてもらった分、甘えさせてくれた分、返すわ」 貴方の命は私が助ける。 そう心に決めて、ベッドに眠る○○の唇にキスをした。 ↓↓↓ 「パチェ」 「…○○? 何やってるの、身体が冷えるわ。ほら、早く入って」 自室にいると、時折○○が訊ねてくることがある。 私と彼は、もう一緒の場所で寝起きしていない。 図書館は彼の身体に悪い。そう言って、出て行くように仕向けたのは私自身だ。 寂しくは無い、いつ何時でも彼を感じていられるからだ。 こうやって、彼のために薬の研究をしている時だって。 「○○、調子はどう?」 「こうやってここにいることが答えにならないか?」 「…………そうね」 彼がこうやって私のところに来たのはもう半年ぶり、いやそれ以上だ。 段々と、彼が床にいる時間は長くなっている。 初めの頃は一日おきに私のところに来ていた。 それが一週間ごとになり、一月ごとになり、二ヶ月ごとになり……。 次は何時来れるのだろうか、それが気になる。それとも――。 「まさか、ね」頭を振って、嫌な考えを振り払う。 「パチェ、今日の薬はあるのか?」 「ええ……ちょっと待って」 紫色の液体を、ベッドに座る○○に差し出す。 ○○はそれを「パチェ色だな」といって飲み下した。 頬が赤くなるのが分かる。○○を振り向くと、確信犯的な笑みを浮かべてこちらを見ていた。おのれ、○○。 それにしても、私は何て無力なのだろう。 図書館の主だ、大賢者だと言われても、こうして目の前にいる愛しい人さえ救えないのだから笑ってしまう。 苦笑する私の頭に、手が置かれた。誰の、とも言う必要などない。 こんなに大きな、暖かな、優しい手は○○以外の誰が持っているというのか。 「パチェ、俺を気遣ってくれるのは嬉しいけどな。お前が身体壊してちゃ笑い話にもならないぜ?」 「○○は…………私に何か要求しようとか思わないの?」 「こうやって薬貰ってるじゃないか」 「そうじゃなくて。もっと、こうして欲しいとか、ないの? 私、貴方に甘えてばかりで…………」 「よしよし、そんなに悲しそうな声出すな」 ○○が私の頭を撫でる。 手の平から伝わる暖かさが、心に染み入って、これから先を思わせて。 涙が出る。 ○○の手を胸に抱いた。泣いてはいけないと、頭では分かっているのに、どうしても涙が止まらなかった。 出来ることなら「死なないで」と叫びたかった。 大きな声でそう言えたら、そう泣けたら、どれだけ楽になるのだろう。 でも、それは許されない。○○が泣かないのだから。 助けると、言った私が泣いてどうする。そう自分を叱咤した。 「なあ、パチェ? やっぱり、俺もお前に甘えていいか?」 「う…うん! うんうん!」 「じゃあさ、今日一緒にねないか?」 …………はいい!? ねるって、ねるって……! ○○を見あげると、照れくさそうに笑って、後ろ頭をかいている。 「○○……ねるって…。そのベッドで?」 「ああ、一々図書館まで戻るのか?」 「二人きりで?」 「もちろん。それとも、大人数の方が趣味なのか?」 「え……あ……う……うう…………むきゅうぅ……………………」 「あ、おい、パチェ!?」 視界の端で○○が手を伸ばしている。 けれど、それよりの早く私の身体は床に倒れこんでいた。 これからきっと私と○○は、一時の甘い夢を見る。 ――つかの間の。そして、最後の。 ↓↓↓ 「……ねえ、どうやったらそんなになるのかしら」 「そんなって……生きてきた年月が違いますから…」 「私と対して違わないくせに……!」 恥ずかしげに頬をかく、リトルを睨みつける。 その肢体が羨ましい、タオルの向こうの膨らみが羨ましい! 何で私はこんなにも……ここがないのか。断崖絶壁だ、日本海か!? …………よし、今ぺったんことか幼児体形とか言った奴、前に出なさい。賢者の石で灰にしてくれる。 「まあ、あまりに強い魔力は成長を阻害するって言いますね」 「そうなの? そんなの聞いたことないんだけど」 「ええ、図書館の蔵書の中にありました。確か…… 『身に余る魔力はいずれ術者に死をもたらす。 それは魔力とはそもそもが人の持てるものではないこと、 そして人にとって毒であることに他ならないからだ。 まして、魔力を持つ人間が成長することはまず考えられない。 魔力を行使するには若き意志、瑞々しい肉体が必要となるからだ。 つまり、魔力を持つものはヒトとしての輪廻をはずれ、長き世を傍観するものとなる。 しかし、例えばの話だ。ここに強大な魔力、しかしヒトの世に干渉できるものがいたとしよう。 それはもう、ヒトではなく正真正銘の化物であるといえよう。 何故か、それは私が書き記せるものではない。 何故なら、私はこの身に魔力を持つものであるが、化物では無いからだ』 だったと思います」 「よくそんな長い文章暗誦出来るわね…」 得意げなリトルを半ば呆れるような視線でねめつける。 要するに、彼女が言いたいことは、 『魔法使いなら成長しなくて当然』 だろう。 ……慰めになるわけない。 「まあまあ、セックスアピールは人それぞれですから」 「ちょっと待って。私そんなことするって言ってないわ」 「じゃあ何でこんな時間にお風呂入ってるんですか?」 「それは――……薬品臭い身体で○○と寝るわけにはいかないし……」 やっとのことで、言葉を紡ぎだす。 リトルの胸から視線を離せば、湯気に満ち満ちた浴場が見える。 私とリトル以外の姿はなく、閑散としている。 この状況、○○と混浴したあの夜を思い出す。また門番は来るのだろうか。 先刻、不覚にも、あまりの興奮に気を失ってしまった私は、気がつけば○○の腕の中にいた。 薬品臭い身体のままことに及ぶのはあまりに恥ずかしい、そう言って私はリトルと共に逃げ出した訳だ。 ……何か勘違いをしているような気がしないでもない。 「んー、でも何で○○さんはそんな際どいことを言い出したんでしょうね?」 「私に聞かないでよ……」 「そうですね、どうせすぐ忘れちゃいますし」 「え……忘れる…?」 「ええ、きれいさっぱり。やっぱり、○○さんとパチュリー様じゃ寿命が全然違いますもの。 ○○さんと過ごした時間なんて、一瞬ですよ。長いスパンで見れば」 「私は……忘れない、○○のこと絶対忘れない」 「無理無理、無理ですって。大体パチュリー様、どうやって私を使い魔にしたか覚えていませんよね?」 「……………………」 「ほらぁ! 絶対忘れますって、間違いなく。ま、そのほうが楽なんですけどね」 「私、先に上がりますね」 そう言ってリトルは軽い足取りで浴場を後にした。 残された私は裸で突っ立ったまま、足元を見つめ続ける。 いつか……○○を、○○と過ごした日々を忘れる……? そんなこと、そんな恐ろしいこと、絶対ありえない。 だって私は、彼と出会った日のことを、彼の笑顔を、彼の仕草を、癖をいくらでも思い出せる。 でも、だからってこれから先、百年経ってもオボエテル? 私の中、猜疑心が語りかけてくる。 お前は、そんな事を言って、絶対に忘れてしまうだろう。 いつもいつも、自分を過信して失敗するくせに。 そうだ、今だってそうだ。自分には永琳には無い技術がある。 そう過信して、○○を診察させなかったのは誰だ? 永琳に診せさえすれば、天才の彼女だ、○○を治してくれたに違いない。 そういったレミリアを無視したのはだれだ? レミィは、私を、私と○○を思って言ってくれたのに! 「やめて……!」 ああ、なんて嫌な奴なんだ、私は。 友を思う友を、無下に、傲慢に下した。 そのせいで○○は……死ぬ! ああ、なんて可哀想なやつだ、私は! 「違う違う違うっ!」 耳を塞いだ。頭を抱えた。 冷たい床に倒れ臥した。もういっそ、このまま喘息の発作でも起こればいいのに……。 耳なんて聞こえなければいい、言葉なんて発せなくていい。 何も考えたくない。 ソウスレバワスレラレル。 「パチェ?」 ○○が死ぬなんて真実。 ↓↓↓ 「落ち着いたか?」 「うん……ありがとう、○○」 本当、この男は何て都合よく現れるのだろう。 私が寂しい時、都合よく現れては抱きしめてくれた。 私がイラついている時、焦ることは無い、ゆっくりやろうぜと、励ましてくれた。 本を持って行かれた時、一緒に取り返しに行こうと、肩を叩いてくれた。 いつも優しく、時には辛く。影のように私の傍にいて、ほのかに微笑んで。 彼を――忘れたくない。 「○○…………お願いがあるの」 「ん、いきなりどうした?」 「…抱いて」 「あ? いきなりどうしたよ」 ○○は驚いた声を上げる。それは仕方ないと思う、私だってそんな事言われたら驚くほかない。 でも、私は何かに突き動かされるように○○に言っていた。 抱く。それ即ち彼氏と彼女、そんなものを飛び越えて、男と女の関係で、ということだ。 その行為は、死ぬまで私の身体に疵として残る。 それでいい、私はそれが欲しい。彼を忘れないために、欲しい。 「ねえ、抱いて」 「パチェ、冗談にしてもつまらないぜ?」 「冗談なんかじゃないわ。…お願い」 ○○の言葉を無視して、パジャマのボタンを外してゆく。 少しずつ肌蹴てゆく服と、露出していく肌。冷たい空気が素肌に触れる。 かじかんだように動かない指で、一つ一つボタンを外していく。 その手に、大きな手が重ねられた。大きな、暖かな、優しい手。 「パチェ、俺はそんなつもりで……」 「違う、違うの、○○は悪くない。私は、あなたを忘れたくなくて、こうするの」 「パチェ……」 「……○○…どうして?」 どうしてそんな目で見るの!? 私は何も悪いことしてないじゃない、何が悪いっていうの!? 彼氏と彼女なら当然でしょ!? 男と女なら当然でしょ!? 何で、止めるのよ! 何で邪魔するの! 私は貴方がほしいの、全部知りたいの! なのになんで貴方は私に知らせてくれないの!? 「パチェ!」 「っ!」 首が曲がるかと思った。 あまりにも強い、あまりにも優しい衝撃だった。 気がつけば私の頬は真っ赤に腫れていた。呆然とそこに手をやる。 口の中は血の味がする。生理的反射で、涙が頬を伝った。 ○○に頬を張られたと気付くまで、時間がかかった。 「ごめん、パチュリー。俺、やっぱ一人で寝るな。 あと、もう薬はいらないから。俺ももう長くないし。 だから、きちんと睡眠は取れよ。……じゃあな」 「待っ……!」 ○○が去ってゆく。ドアの向こうへ、私の手の届かない所。 その先にあるのは暗い闇だけなのに。そんな暗夜航路を行くと、一人で行くと○○は言う。 こうも言った。『私は必要ない』そう言った。 それ見たことか! もう一人の私がせせら笑う。 お前は必要ないと、笑う。さあ、寝てしまえ、忘れてしまえと、囁く。 私は貴方の身体が欲しかったわけじゃない。 貴方の心が欲しかったのに、どうしてこんなことになってしまうのだろう。 「おやすみ、パチュリー」 ドアは閉じる、閉じる。きっと、二度と開かないだろう。 私はただ、それを見つめるだけだった、何も出来ず、ただ見つめるだけだった。 何も考えられない、考えがまとまらない。 呆けたように、ドアを見つめ続けた。それが開くことを願って。 だけどそんな都合のいいことはもうない、あるはずもない。 ――彼は死ぬのだから。 ───────────────────────────────────────────────────────────
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パチュリー 肩書き 種族 閃き コマンダー行動 陣形 得意術 盗み適性 魔女 妖怪・人外 玄武 玄武 パワーレイズ 玄武 6 LP 腕力 器用さ 素早さ 体力 魔力 意志力 魅力 6 8 19 19 9 25 20 18 HP 蒼龍LV 朱鳥LV 白虎LV 玄武LV 太陽LV 月LV 増幅LV 180 10 10 10 20+ 10+ 10 2 武器1(杖限定) 武器2 武器3 武器4 防具1 防具2 防具3 防具4 ルーンの杖 - - - 賢者の石 湖水のローブ シルティーク - 技1 技2 技3 技4 術1 術2 術3 術4 スペルカード - - - - 生命の水 サンダーボール - - サイレントセレナ HP成長 SP成長 WP成長 斬成長 打成長 突成長 射成長 体術成長 0 0 4 - - - - - 増幅成長 蒼龍成長 朱鳥成長 白虎成長 玄武成長 太陽成長 月成長 消費軽減 0 3 2 3 4 4 2 玄武 賢者の石の効果は全術同時使用可能&隠し術複数使用可能。 ただし、クイックタイムと龍神降臨は併用できない。二つセットした場合は龍神降臨が優先される。 浮遊効果もあるので、妖精と同様に特定の技でクリティカルを受けてしまう点には注意。 初期術ポイントの算出方法のせいで最初からWPが滅茶苦茶高く、その後も順調に伸び続けて簡単にカンストする。 一方、武器レベルが存在しないのでSPは0からほとんど伸びず、LP・腕力・体力は全て一桁で、 HPがパーティ外成長しない。まさにもやしである。 コマンダーモードのバブルブローしか消費0の基本術を使えないので、玄武以外を育てるときはお酒を用意してあげよう。
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パチュリー4 ─────────────────────────────────────────────────────────── 488 紅葉の季節が過ぎれば、雪が降ってくる。 チルノが元気に大暴れしそうな天候だったけど、私の所まで被害がくることもなさそうだし、 その時は先に咲夜が何とかしそうだから、放っておいた。 紅魔館に行く度に、弾幕ごっこなんてしてたら身が持たない…… って程じゃないけど、やっぱり私はのんびりするのが性に合ってる。 「……うん。やっぱり部屋は快適な方がいいわよね」 紅魔館から帰って来た私は、冷えて来た外気を追い払うべく、押し入れの中の秘密兵器を取り出した。 ……まぁ、彼女がこのためにわざわざ足を運ぶなんて、私も思わなかったけどね。 「寒いぜ寒いぜ、寒くて死にそうだぜっ!」 「ちょ、ちょっと師匠!早過ぎますってば!!」 猛吹雪の上空を飛んでいく影2つ。 俺は師匠に連れられて、博麗神社に向かっていた。 「森羅結界展開しながら寒がるって、どれだけ寒がりなんですかっ! しかも展開しながら、何て速度出してるんですか!!」 辺りはまさにホワイトアウト。 叫んでるのは、少し離され気味だからだ。 ここで逸れたら、遭難は必死だろう。 師匠は解ってそうだが、自分が今どの辺りを飛んでるのか、まるきり見当がつかない。 「あーもーお前に合わせて飛んでたら凍死するっ!」 急に減速する師匠。 離されるばかりだった距離が一気に縮まる。 そして、むきゅー……と、首根っこを掴まれた。 「いだだだだだっ!」 「一気に行くぜっ! 彗星『ブレイジングスター』!!」 「師匠師匠絞まってます!」 「しっかり掴まれてないと振り落とすぜっ!」 「あ~寒かった……って、どうした霊夢。寒い顔だな」 「どうしたじゃないわよ。このままだと、あなたの弟子が白玉楼に逝きかねないわよ?」 「あ~……うん。きっと首掴まれて運ばれるのが趣味なんだ。離せばきっと、妹紅みたいにリザレクション……」 「しませんってば!!って……着いたんですか?」 寒さと加速と窒息でブラックアウトした意識を取り戻した俺が見たのは、 雪がしんしんと降り積もる、博麗神社の境内だった。 「……本当に復活したわね」 「このくらいタフじゃなきゃ、私の弟子は務まらないぜ」 「寒さに弱い師匠が言うことじゃないでしょうに。 少しは霊夢さんを……って、寒くないんですか?」 出迎えてくれた霊夢さんの服装は、いつもと変わらない独特の巫女装束。 秋くらいから思ってたけど、やっぱり肩とか寒そうな感じが。 「そりゃ寒いわよ。魔理沙ほどじゃないけどね」 暖気を集めて展開する森羅結界なしで、こう言える人間は彼女くらいだろう。 「ほらほら、入った入った。もう先客来てるんだから」 「先客?」 「会えば解るわよ。あ、あなたはちょっと待って。みかん持ってほしいから」 勝手知ったる人の家、とばかりに師匠はずいずいと、 俺は霊夢さんの後に従い、神社の奥へ。 彼女はお茶の用意一式を、俺はみかん箱を抱えて廊下を歩く。 『ちょっ、魔理沙、くすぐったいじゃない!』 『仕方ないだろ寒かったんだから。おー……あったかいな。じんわり来るぜ』 『ひゃぅっ!足くっつけないでよぉ……』 聞こえて来たのは、師匠と……物凄く聞き覚えのある声。 「……いやいや霊夢さん。嵌めたんですか? 師匠とグルなんですか? そもそもいつから知ってたんですか!?」 「嵌めてもいないしグルでもないし…これくらい、あなた見てれば解るわよ。……好きなんでしょ?」 「そ、それは……」 こうも真っ直ぐ言われてしまえば、もう何も言い返せなかった。 「きっと、魔理沙も気付いてると思うわよ?」 「幻想郷にはプライバシーも何もないんですか……」 「ああ、それならまだ大丈夫よ。新聞にでも載らなきゃ、私達以外には知られないと思うし」 新聞――は、あれしかないよな。 間違いなく、文さんが作ってる新聞だ。 幻想郷に来たばかりの頃、色々聞かれて記事にされたっけ。 ……記事にされたから、多くの人と知り合えた。確かにそれは事実だ。 だけど、こんなコト記事にされたら、幻想郷の全員にからかわれかねない…っ! 「ま、早く春が来るといいわね。幻想郷にも、あなたにも」 霊夢さんが襖を開ける。 「お待たせ。お茶とみかん持って来たわよ」 「おお、待ってたぜ霊夢」 「えっ……?」 彼女は、驚いた表情でそこにいた。 紅魔館の図書館の主、パチュリーさんだ。 「ま、魔理沙っ!」 「ちょっ!おいおい、何処に…」 「いいからお願いっ!!」 思いがけない人物の登場に、私は衝動的にコタツから魔理沙を引っ張り出し、廊下に連れ出していた。 すれ違いざま、彼が何か言ったような気がしたけど、必死な私には聞こえなかった。 「ぜーはーぜーはー……」 「おいおいパチュリー、急な運動は身体に障るぜ?」 「解ってるわ…でも、何で彼がいるのよ?」 図書館によく来ては、魔導書を借りていく常連の彼。 『紹介するぜ。私の一番弟子だ』 魔理沙から紹介されたのが、初めての出会いだった。 勉強熱心なのか、魔理沙の教え方に問題があったのか、彼はよく図書館に来てくれた。 ……師に似て大量に借りていく割に、師に似ずしっかり返してくれるのは、まあ助かったけど。 まあ、その、新しい知識を得たときの輝いてる眼とか、 簡単な魔術を必死になって行使している様子とか、本の整理を手伝ってくれる優しさとか……。 ……好きに、なってしまったのかもしれない。 だから、コタツの研究も兼ねて魔理沙に相談するために、神社まで頑張って来たのに……っ! 「何でって、遭難されても困るしな。首根っこ掴んで連れて来た。 最近うちは雪崩が酷くてな。生き埋めになったらまず助からない」 「雪崩って……」 「私の蒐集物だ。私が留守にしてるとあいつが整理してくれるんだが、生き埋めになられると私が困るんでな。 パチュリーも会いたいだろうと思ったから、無理矢理連れて来た」 雪崩の話は魔理沙のせいでしょ……最後、何て言った? 「わ、私が…?」 「バレバレだぜ。図書館に行くと、明らかに応対が違い過ぎだからな。小悪魔にも、様子が変だって相談されたし」 小悪魔にまで? そんなに、変だっただろうか。 ……まあ、終わったことは置いておくにしても。 「来るなら来るで、まえもって言ってよ……」 そうすれば、私だって可愛い服とか探したり…。 「――ああ、なるほどなるほど。フランも結構、いい名前をつけるじゃないか」 魔理沙は一人で納得していた。 ……妹様? あまり穏やかじゃない気がするわね。 「で、どうする……って、答えさせるまでもないな。 このまま帰るとか言い出したら、私が力ずくで引っ張ってく」 「帰ったりはしないけど……その、恥ずかしくて…」 今思い返せば、相当変な形で部屋を飛び出してしまった。 どんな顔で戻ればいいんだろ……。 「普通にしてればいいぜ。きっと霊夢がフォローしてくれるだろ」 「……魔理沙は?」 「いざとなったら、あいつの脳天にマジックミサイル撃ち込む。 さ、早く戻ろうぜ。じゃないと、あいつの頭に風穴が空きかねない」 師匠とパチュリーさんは、数分して戻ってきた。 『どうかした?』と聞いたのは霊夢さん。 それに答えたのは師匠で『秘密を詮索すると、消し炭になるぜ』とのこと。 物騒な。とは思ったけど、これもいつものこと。 パチュリーさんは終始無言だった。 ……師匠自ら、何かあったって言ってるようなものだし。詮索はしないけど。 魔理沙達が、何やら話している。 たまに私に話が振られるけど、緊張していたからか、曖昧な返事しか出来なかった。 それもこれも、私の隣に彼がいることが原因。 席を決めたのはただの流れだったけど、彼の正面じゃなかっただけよかったのかも。 正面だったら……きっと私は顔を上げることも出来なかったと思う。 だからせめて、この緊張を紛らわすために、彼が注いでくれるお茶を飲むしかなかった。 「それじゃ、魔理沙の弟子って言うよりは」 「家政夫、ですかね……修行はちゃんとつけてもらってますけど」 「咲夜には及ばなそうだが、優秀なメシスタントだぜ。 私の家に来ればこいつがご馳走するぜ。パチュリーも一度どうだ?」 「うん……」 俺達はコタツでだべっていた。 主に話すのは、師匠と霊夢さん。 時折、俺にも話が振られるけど、そう困る話じゃない限りは普通に答えられた。 ただ、終始パチュリーさんの元気がなかったのが、気掛かりと言えば気掛かりだった。 気付くと、彼女の茶飲みの中身が半分くらいに減っていることがあるので、近くの俺が注いでおいた。 「頃合いかしらね。そろそろお開きにしましょうか」 「えー」 楽しい時間は終わり、外は結構暗くなっていた。 師匠が不満の声を漏らしていたけど、それで続行する霊夢さんじゃない。 「それじゃあ私も……」 名残惜しそうにコタツから出たパチュリーさんは、立ち上がろうとして……固まった。 「……パチュリーさん?」 「変ね…精霊の気配が…」 彼女は小声で何か呟きながら、魔力を練る。 だが、それが術になることはなかった。 「魔法が……使えない?」 信じられない、といった表情で漏らした言葉。 聞いた自分自身も、信じられなかった。 師匠の説明によると、師匠とパチュリーさんの魔法の系統は、根本的に違うらしい。 俺が学んでいる師匠の魔術は、自分の魔力を直接的に力へ変換する魔法。 対してパチュリーさんの魔法は、精霊に魔力を与え、それに見合う効果を得る精霊魔法。 精霊とのコンタクトが出来なければ、彼女の魔法は成立しない……。 「素直にならないからだな」 「魔理沙だって迷ってれば、飛べなくもなるでしょ。 パチュリーもそうじゃない?」 原因を的確に突く、2人の言葉。 問題点を明確にするのは、問題解決の第一歩だけど……。 彼の前で、何てこと言い出すのよ……っ! 私の気持ちを見抜いたのか無視したのか、魔理沙は更にとんでもないことを言い出した。 「よし、今日は特別サービスだ。私の弟子を貸してやる」 「え、俺?」 「普段、本借りてるからな。今日だけパチュリーに貸してやるぜ。 今日の修行だ。パチュリーを紅魔館まで無事に送り届けて来い」 ねえ、魔理沙。 それは……応援してくれてるの? 「術式展開スペルセット・領域編集エディット・森羅結界構築フィールドセット……」 呪文を唱え、自分の周囲に森羅結界を展開していく。 ただでさえ寒い上に、身体の弱いパチュリーさんを乗せて飛ぶから、結界は必須だろう。 いつもとは勝手が違い、2人分の範囲が必要になるが、何とか展開出来た。 「お、やれば出来るじゃないか」 「修行は真面目にやりますよ。……正直な話、修行とは思えないんですが」 「いやいや。この上なく正当で真っ当な修行だぜ。少なくとも、私の流儀ではな」 俺の気持ちに気付いてる師匠なら……いや、師匠だからこそ、こうして俺を焚きつけたんじゃないか。 そう考えても、否定する材料が見つからない辺り、この人はいい性格をしてると思う。 「パチュリーさん、準備出来ました。いつでもいけますよ」 「うん……お願い。あ、あったかいのね…」 パチュリーさんは、まだ元気がない。 余程ショックだったんだろうか。いつもの彼女とは様子が違い過ぎる。 「……リクエストはありますか?」 「パチュリー、そこはお姫様だっk」 「魔理沙っ!」「師匠っ!」 あーもー、どうしてこの人はこんな状況で茶化すかな……。 「あ、忘れてたわ。はいこれ」 俺達の怒声に入れ替わるように、霊夢さんが何か手渡してくれた。 「霊夢さん……これ、何のつもりですか?」 「お守りよ。見て解るでしょ?」 「全力で遠慮させて頂きます」(キッパリ) さすがに……口に出しては言えないので、全力で突き返した。 「術式展開スペルセット・飛翔天駆エアウィング…!」 結局無難な所で、彼女をおぶって飛ぶことにした。 「吹雪で帰って来れなくなったら、紅魔館に止めて貰えよー!!」 「送り狼になっちゃ駄目よー!」 ……背後、というか眼下から、聞き捨てならない声がしたけど、敢えて黙殺することにした。 上空は相変わらずの視界不良。 山の季節は変わりやすいって言うなら、そろそろ晴れてほしいんだけど……。 「湖の方に降りれるかしら……私が来た時は、ここみたいに酷くはなかったわ。 山は地形のせいで風が乱れやすいの。湖上なら、風は安定しているはずよ」 「湖ですか……確か、向こうですよね」 「ええ、そうよ。霊夢より方向感覚は優れてるみたいね」 湖は紅魔館の近くにあるし、岸沿いに飛べば、必ず着けるだろう。 程なくして、見慣れた湖の風景が視界に広がって来た。 「………」 「………」 互いに、無言。 集中しなきゃいけないから、静かなのは歓迎だけど やっぱり身体が密着してるし、吐息とかが凄く聞こえる距離な訳で。 ……紅魔館まで、飛べるだろうか。色々な意味で。 「聞いても……いい?」 首に回された腕に、力が込められた……と思うのは、気のせいだろうか。 「何を、ですか?」 「魔理沙のこと…どう思ってるの?」 「さしずめ、恋の迷路って感じか」 博麗神社の奥で、魔理沙はみかんを口にほうり込みながら呟いた。 「フランがどうしたのよ?」 「いやいや霊夢。揃いも揃って、恋の迷路に迷い込んだってトコじゃないか、あの2人」 互いに想いを募らせているにも関わらず、言い出せるだけの勇気を持てず、不安になって迷い続ける。 同じ場所を行ったり来たり。 悩んで迷って考えて、ぐるぐる回って同じ場所。 それを例えて、恋の迷路。 「ああ、そういうことね。どちらかと言えばパチュリーの方が迷ってそうだけど」 「そうだな……でも、心のバランスが取れなくなるくらいの大恋愛ってことだぜ。 何せ、魔法が使えなくなるくらいの不安定っぷりだ」 「まあ……でも、いいんじゃない?私達が見てる分にはほほえましいし」 「迷路をぶっ壊す、きっかけがあればいいんだろうけどな。 だけどな霊夢。だからといって、安産祈願のお守りは気が早過ぎないか?」 「あら、いいじゃないの。それとも、中に入れてたスペルカードの話? 心配するに越したことはないし、扱えるだけの技量は見せてもらったし。 魔理沙が弟子に取るだけの素質はあったってことね」 「だったら、普通に渡せばいいじゃないか」 「面倒だったから、お守りの中に入れて一緒に渡したのよ。結局返されちゃったけどね。 それより魔理沙……いつ帰るつもり?」 「寒いから泊めてくれ。……間違えた。寒いから泊まる。このコタツごと帰れるなら話は別だが」 「はいはい。仕方ないわね」 ――ま。頑張って迷路からお姫様を連れ出してやれよ。 この恋の魔法使い、霧雨魔理沙の弟子なんだ。 それすら出来なきゃ、いっそ破門にでもして、図書館に押し込むのもいいかもな。 彼の一番近くにいるのは、やっぱり魔理沙。 彼を拾ったのも、魔法を教えたのも、一緒に住んでいるのも彼女。 だから、彼が好きになっててもおかしくないと思う。 「師匠は師匠ですよ。 強引で、人の迷惑考えてなさそうですけど、少なくとも間違ったことはしないって思います。 ……あ、でも本の借りっ放しは謝ります。いつもすみません、隙を見て持って行きますから」 「べ、別にあなたが謝らなくても……魔理沙が勝手なだけよ」 ちょっと安心した。 彼の答えにもだけど、魔理沙がちゃんと信じられてるのも。 あんな性格だけど、やっぱりちゃんとした魔法の師匠なのね。 「じゃあ、霊夢は?」 人だけじゃなく、妖怪からも鬼からも好かれる霊夢。 誰からも好かれるから、もちろん彼も……? 「う~ん…面倒見のいい姉さんみたいな感じ、ですね。 ほら、師匠がアレなんで……家事は霊夢さんに習ったこともありますし。 ただ、森のキノコの調理法は教えて貰えませんでしたけど」 「仕方ないわよ。魔法の森のキノコの種類、相当あるんだから。 毒キノコだけは、食べないように気をつけた方がいいわ」 「……はい。3回くらい当たったんで、身に染みてます」 た、食べたの? 死ななかっただけ……運がよかったのね。 ……うん。やっぱり聞きたい。 恐いけど、私は聞かなきゃいけない。 本を読み掛けで開いたまま、次のページをめくらないのに似てる。多分。 ずっとこの気持ちを閉じ込めたままなのは、やっぱり切ないから。 「じゃ、じゃあその……私のことは?」 あたいは湖の上を飛んでた。 なぜって、冬だから。 レティが帰ってくるから、迎えに行こうとしてた。 冬に帰って来て、冬の終わりに行っちゃうけど、 どこから帰って来てどこに行っちゃうのか。 あたいは一度も教えてもらってない。 だけど、今日はこんなに雪が降ってるから、きっとレティは帰ってくる。 「……あれ?」 湖に、他に誰かいる。 えーっとあれは……そうだ、外から来た人間だ。 あたいと弾幕ごっこをしても弱い奴。また懲りずに勝負しに来たのかな。 あたいは正面に回り込むと、いつもみたいに声を張り上げた。 「また来たのね魔理沙2号っ! 今日も笑えなくなるくらい凍らせて……」 え――素通りされた!? 「無視するなぁっ!!」 咄嗟にあたいは、散弾を撃ち込んでいた。 そこから先は、本当に夢中だったから、あんまり覚えていない。 「俺は…その……っ!?」 彼女の問いに答えようとした瞬間、覚えのある感覚に襲われた。 ――狙われた!? 彼女の腕を掴むと、一気に詠唱を始める。 「補助術式展開サポートスペルセット・飛翔強化エアブースト!」 「え!?」 術式に魔力を無理矢理追加し、急激に速度を上げて一気にその場を離れる。 それでも、放たれた氷弾を全て避けることは出来ず、何発かは結界で弾くしかなかった。 「今のは…?」 「後ろから撃たれました。パチュリーさん、平気ですか?」 「ええ。驚いたけど、私は大丈夫よ。 私じゃ、相手はよく見えないけど……」 目が悪いんだろうか。 でもどのみち、弾幕ごっこでは相手の姿を見れても、自分にとっては大してプラスじゃない。 大事なのは、弾幕を避け続けること。当たらないことだ。 「このまま紅魔館まで逃げ切ります。構いませんね?」 「……そうね。応戦してあなたが負けたら、寒い中を歩かなきゃいけないし。 弾幕の経験はあるの?」 「張るのは苦手、避けるの専門です。たまにチルノと喧嘩する程度ですけどね」 「ちょっと、それじゃないも同然じゃ……」 「文句は後で聞きます。ちょっと失礼しますよ」 速度を調節して、互いの身体を入れ換え、正面から抱きしめるような体勢にする。 「……っ!?」 「後ろに相手が居るのに、パチュリーさんを盾にする真似はしたくないんです。 出来れば顎引いて、あまり喋らないで下さい。舌噛みますから」 出来る限り避けるつもりだけど、自分の技術じゃ不安しかない。 結界だって、毎回弾けるとは限らない。 貫通したら……まあ、弾避けの盾にくらいはなれるかな。 ……まあ、決して邪心がないかと聞かれれば、それはなくもないけど。 あまり甘いこと考えてると、すぐ落とされる。集中集中。 前に本で読んだ術式を思い返し、組み立て、魔力を込めて法に変える。 「補助術式展開サポートスペルセット・感覚強化インスピレーション!」 意識が澄んで、認識出来る世界が広がっていく。 さっきまでは見えなかった紅魔館も、死角にあるはずの弾幕も、全部自分の世界にある。 初めての割には上手く行った……けど、逃げ切れなきゃ意味がない。 でも、今の自分なら…っ! 「で。実際の所、魔理沙としてはどうなのよ?」 「まあ、私以上霊夢以下って所だな。まだこの煮付けの味付けの加減が……」 「料理の腕の話じゃないわよ。彼の師匠なんでしょ」 「ああ、弾幕な。とりあえず基礎中の基礎の、飛行方法と森羅結界だけは教えてあるぜ。 もう少ししたら、スペルカードの使い方を教えるつもりだったんだが……」 「一度実際に使わせた方が、面倒がなくて楽なのに」 「おいおい、私のスペルカードなんて使わせたら、たちまちガス欠で気絶するぜ」 「マスタースパークはともかく、私の封魔陣くらいなら大丈夫でしょ。 ……あ、そういえばさっきお守りに入れてたの、夢想封印だったわね」 「突っ返したあいつの方が正解だったかもな。 ただあいつ、図書館から本借りて来て勉強してるからな。 何種類かの魔法なら、もう扱えるみたいだ。 隠してるようだが、私の眼はごまかせないぜ」 「師弟揃って勉強熱心なのね……。 あーあ、私の代わりに異変の解決とかしてくれないかなぁ……」 「怠けるな怠けるな。 あの閻魔に今度は『あなたは少しのんびりし過ぎる』なんて言われるぞ。あ、おかわりくれ」 「はいはい、召し上がれ。……うん、42点かな」 「味付けがか?」 「魔理沙の物真似がね」 「氷符『アイシクルフォール』!!」 おかしかった。今日は何もかもおかしかった。 当てたはずなのに、当たってない。 逃げ場がないはずなのに、逃げられてる。 あいつがこんなに避けられるはずない。 あたいのアイシクルフォールも、嘘みたいに避けられる。 正面が弱いってレティに言われたアイシクルフォールだって、頑張ってあたいも撃ってるから、弱点なんてもうないはず。 ――なのに、当たらない。 いつもは互いに撃ちあってばかりだったけど、今日はあいつは撃って来ない。 知らなかった。あいつがこんなにすばしっこいなんて。 きっとあたいに勝つために、特訓したに違いない。 アイシクルフォールは何回も使ったから、もう見抜かれたんだ。 でも、こっちはまだ見せてないから――― 「凍符『パーフェクトフリーズ』!!」 ――これで凍らせるっ! その弾幕は、覚えのある癖があった。 直前の魔力の集束からして、スペルカードの類だろうか。 規則正しい弾幕は、パターンを掴めば避けるのは簡単になる。 ただ、緻密な飛行制御が出来ない自分が、そう避けるのは難しい訳で。 「領域変更エディット――!」 パチュリーさんの周囲だけは結界を固定し、予想される着弾点のみに領域を限定して、結界を再構築する。 避けられる弾は避け、避けられない弾は、絶えず結界の範囲を変更・構築し、ピンポイントで受け止め弾く。 今までで、直撃はゼロ。 このまま行けば、何とか紅魔館まで……。 「2枚目、来るわよ!」 「はいっ!」 後方に高密の魔力。次の瞬間には、大量のばらまき弾が迫っていた。 速度と密度はさっきの比じゃない。全く別のタイプのスペルカードだ。 それでも弾道は直線的で単純だし、隙間は意外と多―――っ!? 「なっ……!」 真横を通り過ぎようとしていた弾が、一瞬のうちにその動きを変え、背後へ流れていった。 慌てて眼前に意識を向けると、先程避けたはずの弾が、こちらへ迫っていた。 弾幕が……逆流した? 違う、止まったのか! 正面には弾のカーテン。 後ろからは、第二波が放たれている。 前後からの挟撃弾幕……! 結界を全力展開して突破……駄目だ、この密度を立て続けに受けたら破られる。 気合い避けとピンポイント結界……これもこの数じゃ捌き切れない。 でも、この弾幕を避けられれば、相手だって突っ込んで、無事じゃ済まないはず。 それなら無理をしてでも、まとめて避ければっ! 「術式展開スペルセット……重力加速グラビティブースト!」 ガクンと、一気に高度が下がる。 通常の飛行制御じゃ行えない、急激な軌道変更。 猛烈な速度で近付く湖面。ここで止まれば、おそらく狙い撃ち。 また前後から挟まれて、詰まれて終わり。 急上昇するような魔法は……なくはないけど、魔力が相当キツくなる。 「術式並行展開パラレルスペルセット――」 魔力がキツくなるのが同じなら、ここで何とかする方がいい。 「慣性置換モーメントスライド・方向転換ターンベクトル!」 落下の勢いを全て湖の水に置き換え、それでも逃がし切れない勢いを、方向を変えて前へ飛ぶ力に変える。 背後からは、空高く水柱が立っていた。 あれで沈んだと勘違いしてくれればいいんだけど。 とりあえずは、時間稼ぎくらいにはなるだろう。 「あ、あなた…何て無茶を……!」 「やっぱ、バレてましたか?」 「同時魔法は高等技術よ。 ……扱えても、術者の負担は相当なものになるわ」 彼女の言う通りだ。 魔力の使い過ぎなんだろうけど、あまりスピードは出せそうにない。 それに……もう自分の分の結界は張れそうにないから、背中とかが凄く寒い。 「あなたは魔理沙とは違って、魔力が多い訳じゃないわ。 魔理沙の無茶を真似しようだなんて、思わない方がいいわよ」 「必要がなきゃ、無茶なんてしませんってば。極力控えますけど、それじゃ駄目ですか?」 「控えるって言葉は、するってことと同意よ。……言っても聞かないのは、魔理沙に似たのかしら」 「師匠ほどじゃないと思いますけど……。さっきの相手、撒けましたか?」 弾幕が展開されている気配はないものの、追って来られてたら困る。 もう魔力の余裕はないし、感覚強化インスピレーションも掛け直せない。 離れた相手の魔力感知があまり出来ないから、自分より彼女の方が目になるだろう。 「……追って来てる様子はないわね。少なくとも、私が解る範囲でだけど」 「なら、十分ですね。……文句、言ってもいいですよ」 やむを得ない弾幕ごっこだったにせよ、庇うために抱きしめたのは……色々責められても仕方ない。 むしろ、少しでも邪心があった分、責められた方が後ろめたい思いもしなくて済む。 「別に文句だなんて……そもそも私が魔法を使えれば、撃退も出来たし…。 無茶して守ってくれたんだから、文句よりも礼を言うわ。ありがとう」 「……嫌じゃなかったんですか?」 「仕方ないことを怒ったら、それこそ仕方がないじゃないの。それに…その、暖かいし…」 意外だった。 てっきりいつものジト目で文句言われるか、最悪フォレストブレイズで燃やされるかくらいは考えてたけど。 「お咎めなし、ですか…」 「咎めてほしいなら、相応の権利は行使するわよ?」 「……お仕置きとかなら勘弁してください。 飛べなくなりそうですから」 流石にしないだろうけど、一応は念を押しておく。 今なら単発の狙い弾で落ちる自信がある。それほど魔力が残ってない。 そりゃ、魔法が使えない彼女が、弾幕張るとかまでは出来ないだろうけど。 「そんなことしないわよ。じゃあ、1つだけいいかしら?」 「……弾幕と無茶な用件意外なら、何でもどうぞ」 「自分は無茶するくせに…まあいいわ。その、さっきの答え……聞かせてくれる?」 私は知らないことがあると、本で調べる。今まではそれで通用していた。 知識の名を持つ私でも、恋に関しては無知だった。だから、今まで通り調べた。 でも、本に載ってはいたけど、表現が抽象的で、よく解らなかった。 だから、魔理沙に相談してみようと思った。 マスタースパークは恋符。先入観を持つのはいけないけど、多分関係があるのかも。 妹様の恋の迷路も、関係があるかもしれないけど……禁忌に触れずに済むなら、それに越したことはないし。 そう思って、魔理沙と待ち合わせたのが今日。 ……それなのに、まだ準備不足なのに、私は聞いてしまっている。 以前の鬼騒ぎの時も、あらかじめ用意してから行動に移していたのに……私らしくない。 頭では、こんなに解っているのに。 「その……」 「……っ」 不安が酷くて、いつもの自分を保つのに精一杯のくせに。 ――拒絶されたら、泣き出してしまうかもしれない。 それくらい好きなのに、自分から伝えられない。なんて臆病なんだろう……。 「俺は、魔法使いとしても人としても、まだまだ未熟者です。 スペルカードも扱えないし、自分の分も解らずに背伸びして、無茶をやるひよっこです。 ……でも、それでもいつか、一人前の魔法使いとして、パチュリーさんの力になりたいんです」 「……どうして?」 「勝手かもしれませんけど、好きだから…です」 それが、望んでいた答えでも、私はどうしていいのか解らなかった。 「わ…私は……っ」 気持ちを伝えたいのに。私も応えたいのに。 力になりたいって、好きだって言ってもらえて、嬉しいのに。 どうして…言葉が出てこないの? 出てくるのは涙だけ。 彼に見せまいと、私は彼の胸元に顔を押し付けた。 「……勝手なこと言って、すみません」 謝らないで。そんなこと言わないで。 心で彼への謝罪を呟きながら、私は彼の温もりの中に沈み込んでいた。 「パチュリーさん……」 時折しゃくりあげるように泣いていた彼女は、今は泣き疲れて眠ってしまっている。 レミリアさんに吸われるか、粉々にされるか。咲夜さんには斬られるか。小悪魔さんなら……どうするだろ。 女の子を泣かせた罪は重いと言われるけど、伝えるだけ伝えたから、後悔はしていない。 そろそろ、紅魔館に着くはずだけど……。 「あ、パチュリーさ……えぇぇぇっっ!?」 「め、美鈴さんっ!パチュリーさん寝てますから静かに!」 「だっ、だってその格好……」 「事情はちゃんと話しますから、落ち着いてください。お願いします」 意外と紅魔館に近付いていたらしく、あっさり美鈴さんに見つかってしまった。 激しく誤解……なのかどうかはさて置いておいて、相当取り乱してたけど、湖でのいきさつを話したら落ち着いてくれた。 ……泣かれたくだりは省略したけど。 うん。話して解ってくれる人って、幻想郷ではやっぱり貴重だな。 そして今、俺は小悪魔さんに連れられて、図書館内を歩いている。 仕事中の美鈴さんに代わり、パチュリーさんを自室まで連れていくということで、館内に入れてもらったのだ。 ちなみに、色々周囲の目が気になるので、パチュリーさんは背負い直した。 ……後で、美鈴さんにはコッペパンでも持って行こう。 「熟睡なさってますね……」 「風邪ひかれたら困りますし、ずっと森羅結界張ってたんですよ。外は相当寒かったんで」 「そうなんですか?私はずっとここに居ましたから…。あ、お部屋はこちらになります」 案内された彼女の部屋は、よく片付けられていて、少し寂しく見えた。 栞を挟まれた読みかけの本が数冊置いてある意外は、本棚がやや多いくらい。 ……師匠の部屋とは、まるで正反対。本人の前では言えないけど。 壁際にあるベッドに、彼女を降ろ 「んっ……」 「ぐぇっ」 ……そうとして、チョークスリーパーを決められた。 いや、まあ。離してくれなかっただけなんだけど。 「あの……顔色、悪いですよ?」 「ギブアップしますから助けてもらえるとすごーく助かります」 「あ、そうですね」 きっと、小悪魔さんも悪気はないんだろうなぁ……。 幻想郷の人の会話は何かズレてるけど、それがこっちの普通なのかもしれない。 小悪魔さんに手伝ってもらって、パチュリーさんをベッドに寝かせたのは、それからしばらく後のこと。 起きてるんじゃないか、とも思ったけど、やっぱり彼女は眠っていた。 ただ……その寝顔は、あまり安らかじゃない。 不安そうな、悪夢でも見てうなされているのかもしれない、そんな寝顔。 「顔色、まだ悪いですよ。 薬でも、お持ちしましょうか…?」 「……え?」 「だ・か・ら、顔色悪いですよ。ほら、鏡見てください」 少し怒ったように、強引に手鏡を渡された。 見慣れた自分の顔……だけど、少し疲れてるだろうか。 「典型的な、魔力を使い過ぎた際の症状ですよ。 パチュリー様が心配なのは私もですが……ご自分の心配もなさってください。薬、持ってきますね」 これが、魔力を使い過ぎた影響だろうか。 師匠のスパルタ修行の後で、ボロボロになった時よりは幾分マシだけど……。 ……試してみるか。 「術式展開スペルセット……」 魔力を集めて、簡単な魔法を組み立てる。 前はともかく、今はもう失敗することがないはずの初歩の初歩。 なのに……。 「――術式取消スペルキャンセルっ!」 不意に襲う目眩と頭痛。 身体に力が入らず、床に膝を着いてしまう。 「は、はは……やっぱ、無茶はするもんじゃないですね……」 「そうね……その調子じゃ、帰るのは無理そうね」 ぽん、と、頭に乗せられる手。それだけで、頭痛が嘘みたいに引いてくれた。 「すみません、起こしてしまいましたね」 「何やってるのよ……もう。 魔力は分けてあげたけど、まともに魔法が使えるのは…そうね、半日以上休んでからね」 今から半日……となると、明日の朝くらい。そうでなくても、夜間飛行は師匠に止められてて、やったことがない。 話によると、人を襲う妖怪は夜によく出てくるとか。 「今日は泊まっていくといいわ。 レミィと咲夜には言っておくから、どこか空いてる部屋を使わせてもらって」 「……いいんですか?」 「魔理沙も言ってたじゃない。帰れなかったら泊まってこい、って。 無茶させてまで帰すようなことはしないわよ」 さっきまでの、泣き疲れていた彼女とはまるで別人だった。 いつも、図書館で本を読んでいる時の、いつも会う時の彼女。 ぬるま湯のような、友人としての仲でも、好きなことには変わりはない。 ……言ってしまった以上、そんな関係も壊れてしまうと思っていた。 でも、彼女はこうして接してくれている。それが嬉しかった。 「じゃあ、ありがたく泊まらせてもらいます。 ……片付いた部屋なら、埋まる心配もないでしょうし」 「どんな部屋で寝てるのよ……」 「師匠が色々な物持ってくるから、俺の部屋まで占拠されてるんですよ」 彼女が望まないなら、自分はきっと、現状で満足すればいいんだろう。 彼女は……本当に、いい人だから。 「お待たせしました。お薬を……あら、パチュリー様。起きてらしたんですか」 「ええ。……相変わらず、魔法は使えないけどね。 彼、今日泊まっていくから、咲夜に言ってどこか空いてる部屋を使わせてあげて」 「はい、かしこまりました。 咲夜さんに聞いてきますから、飲んでおいてくださいね」 小悪魔さんは、俺に錠剤の入った瓶を渡すと、また出ていってしまった。 ずしりと重く、牛乳瓶の1.5倍はありそうな瓶に、色とりどりの錠剤が詰まった薬瓶……。 「……何錠飲めばいいんですか?」 「妖精は半分。人間なら1瓶。それ意外なら3倍ね」 「……冗談ですよね?」 「もちろんよ」 楽しい時間はあっという間に過ぎ、彼は咲夜に連れていかれてしまった。 「はぁ…」 本を読む気にもなれず、読んだ所で頭に入らず、かといって眠ろうと努力してはみるものの、半端に寝たためか寝付けなかった。 そんなこんなで、天井を見つめたりしながら、寝返りをうってみても、眠気は訪れない。 普段、寝るのを惜しんで本を読んでるんだから、こんな時くらい素直に眠れてもいいじゃない。 静かな夜。こうもすることがないと、また彼の事を考えてしま……。 ……いけないいけない。 考え過ぎると、堂々巡りを起こしてしまう。 彼の気持ちは聞くことが出来た。 私の気持ちははっきりしてる。 問題なのは、私がそれを伝えられないこと。 結論はもう出ているのに、解決策だけが見つからない。 ――あんなことがあったから、いつものように話すことはもう出来ないんじゃないか…って考えてた。 そうでなくても、少しぎくしゃくした関係になってしまう…くらいは予想してた。 でも、彼は普段と変わらず私に接してくれたから、私も冗談を交えて接することが出来た。 そんな彼の優しさが、とても嬉しかった。 「……あ」 本当に、気付けば彼のことばかり考えてる。 「恋の病……ねぇ」 ちょっとだけ、本に書いてあったことが理解できるような気がした。 「そうそう。パチェを見てると、本当にそんな感じね」 突然の声。 振り向くと、ドアの所にレミィが立っていた。 「言っておくけど、ノックもしたし、ちゃんと呼んだわよ。 明かりが着いてるから、起きてるとは思ったけど、ね」 「そ、そう……」 こんなに静かな夜なのに、聞こえなかったの…? はぁ……重症かも。 「ふふ。恋をすると難聴になるのかしら?」 「きっと音速が遅くなるのよ」 「なるほどね。 春が集まった冥界は音速が遅いらしいから、パチェもそういうことね」 笑顔のまま、レミィはこっちに歩いてくる。 からかいにでも来たのだろうか。 「それとレミィ。正しくは『恋は盲目』よ」 「あら。じゃあ夜雀の歌でも聞いて鳥目にでもなる? ……そういえば、鳥目で春っぽい霊夢は、恋でもしてるのかしら」 鳥目に関しては、本人は否定してるけどね。 ――って。そうじゃなくて、色々まずい。こういう時のレミィは、絶対に何かある。 伊達に付き合いが長い訳じゃないから、それくらい解ってる。 「何か用があって来たんじゃないの?」 「なくても来るけどね。 聞いたわよパチェ。私が寝てる間に、人間の男を連れ込んだんですって?」 え……連れ込んだ? 「おぶられたり抱き合ったり……とか、色々聞いてるわよ。パチェもスミに置けないわね」 「ああああのねレミィそれは誤解で成り行き上仕方なかったというか偶然そうなったわけで私達はまだそんな仲じゃゴホゴホっ!」 突然の胸の苦しみに私は身体を折った。いつもの喘息だ。 「ほらほら落ち着いてパチェ。誤解があるなら、ゆっくり教えて頂戴」 ふと思う。この苦しみのうち、一体どれくらいが、彼に関する苦しみなんだろう。 彼と一緒に居られたことが、 好きだって、力になりたいって言ってもらえたことが嬉しいのに。 離れていて、会えないのが寂しいのに。 想いを募らせることは切なくて。 なのに、伝えられないのが……苦しくて、辛い。 「……落ち着いた?」 「うん…」 身体が落ち着いてから、私はレミィに今日の出来事を全部話していた。 レミィの激しい誤解を解く、というのもあったけど……ただ、誰かに聞いてほしかったのかもしれない。 「……その時言っちゃえば、楽だったんじゃない?」 「だって、言葉が出なくて…うぅ」 レミィにつつかれた所が、私の痛い所。 嬉しかったけど、口には出せなかった私の気持ち。 「でも、言うチャンスは沢山あったはずよね。どうして――」 言わなかったの?と尋ねられて、答えに詰まった。 泣いてたから言えなかった……だったら、紅魔館に戻ってからなら言えたはず。 拒絶されるのが恐かったから……前はそうだったけど、今はもうそんな心配はないはず。 言えなかった理由は、きっとそんなのじゃない。 きっと私が意識していない、そんな理由。 「……ごめん、はっきり言えない」 「じゃあ、今から彼の部屋に夜這いでもかけてきたら?」 ―――――っ!? さらりと、とんでもないことを言われた気がする。 私がその言葉の意味を理解するまでに、どれくらいかかったかは解らなかった。 「ななななななにを言い出すのよ―――!?」 「あら、言葉が違ったかしら? 確か、パチェが持ってた厚い本に、『言い寄る』って意味の言葉だって……」 求婚するって意味もあるんだけど……その、うぅ…。 「まあ冗談は別にして、まずは理由をはっきりさせましょうか。私がこれから質問するから、ちゃんと答えてね」 「う、うん」 私ひとりで考えてても、一向に答えが見付からない。 だから、レミィの質問が糸口になる可能性は、十分にある……と思う。 「じゃあまず、彼のことは好き?」 「うん……」 そうじゃなきゃ、こんなに悩んだり苦しんだりしない。 「彼のこと、信じてる?」 「魔理沙よりは、まぁ…」 「……パチェも言うわね」 未熟な所はあるけど、持ち出さないでほしい本は借りて行かないし。 無茶はするけど、守ってくれたし。 「じゃあもし、私が彼の血を欲しがったらどうすr」 「絶対止めるっ!」 反射的に、私は叫んでいた。 レミィも驚いていたけど、私も驚いた。 私がこんな大声を出せるなんて、知らなかった。 「ご、ごめんレミィ。でも、やっぱり……取られたくないから」 「ふふっ。魔理沙に言ってる『持ってかないでー』くらいじゃ、私は止められないわよ? でも、パチェにとって、それくらい大事な人だってことね」 「……うん」 でも、本当にレミィが彼の血を欲しがったら……? 外の世界には献血っていう、血が足りない人に血を分ける制度があるらしいし。 彼がそんな風に考えてOKして、レミィが彼の首筋に噛み付いて……。 ……日と水のスペルカード、増やそうかしら。 「でもまぁ、咲夜のを吸い過ぎたら、彼も少し味見してみようかしらね」 ……やっぱり、増やして合成しなきゃ。 確か外の世界の本に、参考になりそうな物が載っていたはず……。 「じゃあ次の質問。彼と一緒にいると楽しい?」 「楽しいし嬉しいけど……安心する、かな。逆に、いないと寂しくて…」 本当なら、ずっとずっと側にいたいのに…どうして? こんなに想っているのに、言い出せない自分。 私を押しとどめているのは……何? レミィは、さっきまでの意地悪な笑顔で、そんな私を眺めてる。 これは私の感じたことだけど、と断ってから彼女は口を開いた。 「今の関係が嬉しかったから、今まではそれでよかった。 そして、好きになってしまったから、伝えたい。 ここまではよかったけど、伝えたらどうしても今までの関係から変わってしまう。 彼もパチェが好きなんだと解って、失恋の心配はなくなった。 だけど、まだパチェは躊躇してる。それは、どうしてかしら?」 レミィの言ってることは、大筋で正しい……と思う。 大事なのは、その先。 私が気持ちを打ち明けられない理由。 それは―――? 「私が思うに、パチェが知らない『恋人』という関係。 それを恐れてるんじゃない?」 「……え?」 「パチェは本で調べたり、前もって準備をしてから行動するわよね。 知っていることが前提だからそういうことが出来るけど、逆に知らないことや本で学べないことだったらどうかしら?」 本で学べなかったこと。 ……あの鬼騒動の時は、次の宴会まで時間がなくて、調べることが出来なかった。 仮に時間があったとしても、蔵書の中に鬼に関する書物があったかは疑問だけど。 ただ、結果的には原因も突き止められたし、豆をぶつける魔法の作成も出来た。 じゃあ、今回は? 本で調べることは出来たけど、私があまりそれを理解出来ていなかった。 少なくとも、彼に拒絶されるという、最悪の事態はないことは解ってる。 ……でも、その先が解らない。だから私は動けない? 「経験も知識のうち、ということよ。……まあ、こういう答えは自分で出すしかないから、私が正しいとは言わないわ」 「でも…参考にはなるわ。ありがと、レミィ」 「私は運命を操れるけど、運命を啓くのはその中で生きる者達よ。パチェの辿る運命に、よい月があることを祈ってるわ」 目の前のレミィの姿が、一瞬で大量の蝙蝠に形を変えて飛び去る。 ……私は、私が思ってる以上に、色々な人から応援されているのかもしれない。 だから私はきっと、その応援に、彼の想いに、応えなきゃいけない。まだ朝までは時間がある。 例え、一晩かかってでも……気持ちの整理、つけなきゃね。 目覚めると、朝だった。 幻想郷に来てから、こんな静かに朝を迎えるのは初めてかもしれない。 師匠に叩き起こされたり、実験の爆風で吹っ飛ばされたり、そんな朝ばっかりだったし……。 屋敷は静まり返っている。 レミリアさんは吸血鬼だから、紅魔館は夜の方が活気があるのかもしれない。 静かに眠れたおかげか、魔力はかなり戻っている。 師匠の所までくらいなら、普通に飛べそうだ。 いきなりいなくなるのも失礼だし……帰る前に、パチュリーさんにお礼くらい言っていこう。 昨日小悪魔さんに案内されたときは、道順を暗記する自信はなかったけど、何とか図書館まで辿り着くことが出来た。 ……まあ、たまには勘に頼るのもいいってことで。 図書館内に人影はない。 パチュリーさんは部屋に居るのかもしれないけど……まだ寝てるかな。 勝手に部屋に入るのも悪いし、起きて来るまで、魔導書でも読ませてもらおうっと。 『いいかパチュリー。あいつに対して有効なのは、ずばり《押し》だ。 勇気を持って押し切れば、きっとあいつもイチコロだぜ』 『あれ……魔理沙?何の話?』 『まぁ簡単に言うと、押しても駄目なら 押 し 倒 せ っ !』 「……?」 気が付くと、朝だった。 ……日が出てから少し経ってるくらいね。結構眠っていたのかも。 夢の中で、魔理沙がまたとんでもないことを言っていた気がする。 レミィといい、魔理沙といい、こういう……その、きわどい言い方は止めてほしいんだけど。 ――彼、起きてるかな。 もう、知らないことなんて恐くなんてないから。 きっと言えれば、胸の切ない痛みも消えるはずだから。 ベッドから出て、ドアを開け放つ。 ……うん、小悪魔か咲夜を捕まえて、彼がいる部屋へ――。 意気込んで、踏み出した私の書斎には……彼がいた。 本棚の近く、いつも座ってる席で、真剣な眼差しで本を読んでいる。 声をかけづらいくらい集中したその横顔に、不意にドキっとした。 他者を寄せ付けないような、強い集中力が生み出す雰囲気。 それは、心理的な結界とも呼べるものなのかもしれない。 どれくらいそうしていたか解らないくらいの時間の後、彼は大きく息を吐くと、その集中を解いた。 「あ……パチュリーさん、おはようございます」 「お、おはよう。昨日はよく眠れたかしら?」 「ええもう、魔力も大分戻りました。本当にありがとうございます」 う……やっぱり彼の前だと、いつもの自分を装ってしまう。 言おうって、伝えようって決めたのに、決心が鈍ってしまいそう。 「別に、お礼なんて……」 恥ずかしくて、目を逸らしてしまう。 恥ずかしがらず、迷わず言えた彼に比べれば、私は……。 「そんな、いいですってば。 これから帰りますんで、小悪魔さんや咲夜さん達に宜しく伝えて頂けますか?」 か、帰っちゃうの? 「ええ、解ったわ。それと……」 動揺する心を抑えるのも大変……だけど、今日を逃す訳にはいかない。 決めた覚悟は、いつ揺らぐか解らない。 それに、彼は(主に魔理沙が持ってった)本を返しにくるだろうけど、いつ来るかなんて解らない。 それまで……この切ない気持ちのまま過ごすのは、きっと耐えられない。 だから―― 「門まで見送るわ。それくらいはいいわよね?」 ――有無なんて言わるつもりは、最初からなかった。 「あ、バチュリー様……と……えーと…魔理沙2号さん」 「……お勤めご苦労様です、中国さん」 目には目を。歯には歯を。あだ名にはあだ名を。 チルノにつけられたあだ名で呼ばれるのは嫌なので、美鈴さんの痛い所で返す。 特に、師匠の2号……て意味に聞こえる辺りが特に。 「うぅ…昨日は名前で呼んでくれたじゃな「じゃあちゃんと俺も名前で呼んで下さい」……ごめんなさい」 ……名前、やっぱり忘れてるな。 でも、俺だってあまり名前で呼ばれてないけど、美鈴さんみたいにはならない。 前に何かあったんだろうか。 「……雑用係に降格かしらね」 「そ、そんなぁ~……」 パチュリーさんの一言で、面白いように反応する美鈴さん。 ……もしかして、玩具にされてるのか? 「それはそうと美鈴。私から貴女に、最重要任務を与えるわ。……これが出来なきゃ、本当に雑用係ね」 「えぇっ!?は、はい……」 「指示は単純だから1度しか言わないわ。15分、ここ以外の場所で休憩してきなさい」 それが最重要任務? そう思ったのは美鈴さんもだろう。 ただ、何かに気付いたのか、突然 「了解しましたっ♪この紅 美鈴、その任務受けさせて頂きますっ!」 とのたまい、素敵な笑顔で走り去って行ってしまった。 ……休憩が貰えて嬉しかった、ってことにしておこう。うん。 美鈴に暇を出し、門の辺りには彼と私の二人っきり。 湖から吹いてくる風は冷たいけど、彼がまた森羅結界を張ってくれた。 昨日の今日で無理はさせたくなかったけど、私は彼の優しさに甘えてしまった。 えーと……結界の範囲を狭めれば、彼の負担もきっと軽くなるはずよね? 「え……!?」 無防備な彼の背中に抱き着いて、身体を密着させる。 「結界だけより、この方がいいのよ」 触れることで感じられる彼の体温。やっぱり、結界より暖かい。 ……言い訳だって、解ってる。恋は……理屈じゃないから。 ――ただ、こうしたかっただけなんだから。 「昨日の返事……言えなくて、ごめんなさい」 「そんな、俺は……」 結界の境界が、揺らいでいるのが解る。 動揺したり、心が不安定になれば、魔法だって不安定になるし、私みたいに使えなくもなる。 ……彼は私の気持ちを知らないはずだから、彼の不安は、相当なものだったんだろう。 それでも、私以上の不安の中で、紅魔館まで飛んで来て、今もこうして結界を維持している。 確かに彼は、魔法は未熟で無茶ばかりする半人前かもしれないけど、気持ちに関しては私以上に強い。 そんな所にも、私は惹かれていたのかもしれない。 「パチェ、って呼んでもいいわよ。レミィだって……ずっとそう呼んでるんだから」 「……いいんですか?」 「それと敬語も使わないで、普通にしてていいわ」 顔全体が熱い。心臓は早鐘を鳴らして、鼓動は際限なく高まっていく。 切ない気持ちが血液に乗って身体中に回って、また涙が出てしまいそうになる。 ……でも、ここで止める訳にはいかないから。不器用な言葉だって、くしゃくしゃな表情だって構わない。 ――マスタースパークがなぜ恋符なのか、解った気がする。 自分の弱さや臆病な所も全部隠さずに、真っ直ぐに想いを伝える……そんな所が、マスタースパークに、魔理沙自身に似ている。 確かに私は魔理沙じゃないし、マスタースパークも撃てない。 けど、それでも……っ! 「私だって…好きだから……っ」 それからしばらく、私の時間感覚はおかしかった。 ……咲夜に時間を止められたのか、単に私が解らなかったのか。 気付けば、彼の背中に抱き着いていたはずが、彼に抱きすくめられていた。 「よかった……」 「……余計な心配、させたわね」 「余計なんかじゃないですよ。 そりゃ、覚悟はしてましたけど……」 えーと……確かに、さっき言ったわよね。 「だから敬語なんて、使わなくていいのに……」 「すぐには無理ですって。パチェ、これから慣れる……じゃ、駄目ですか?」 あ、名前……。 「嬉しいけど、それだけじゃ駄目よ」 「レミリアさんと同じように呼ぶのも、結構恥ずかしいんですけど……。時間、もらえませんか?」 「……そうね。少し、かがんでもらえるなら」 こういう言い方は、卑怯かもしれない。私のわがままでしかないし。 それでも私は、かがんだ彼の首に手を回し、おもいっきり背伸びして----。 ごすっっ!! 「むきゅぅ……」 「ぱ、パチュリーさん…平気ですか?」 突然、零距離からのヘットバット。 帽子も落としてしまい、紫の髪が風に揺れる。 俺は師匠の修業で痛いのは慣れてるけど、仕掛けた彼女の方が痛そうだ。 ……あ、呼び方間違えてた。 「そ、その、私……ごめん。本に書いてあることくらいしか知らないし、初めてだから……」 顔を真っ赤にして、目元に涙を浮かべながら謝るパチュリーさん。 彼女がしようとしたのは、やっぱり……。 「気にしてませんって。それより、よければ……目、閉じてもらえますか?」 「う、うん……ありがと」 恥ずかしながら頷いた彼女は、俺に身を任せて目を閉じる。 そして俺達は、冬の高い空の下、唇を重ねた。 ……ただ、後日話を聞いた所では、何人かが覗き見していたらしいけど。 「あの、咲夜さん。もう30分近く経ってますけど……」 「私の時計では、まだ14分と48秒よ。お嬢様が中庭から戻って来るまではね」 「うぅ。出て行けないのは解りますけど……サボってるみたいで、ちょっと罪悪感が」 「臨時の休憩よ。そう思いなさい。出て行ったら、雑用係に降格だからね」 「はい……。あ、そうでした。咲夜さん、彼の名前……何でしたっけ?」 「春……じゃなくて、朝ですよー」 「……霊夢、随分と変わったな」 「何言ってるの。寝言は寝てから言うものよ」 魔理沙が目覚めると、いるはずのない妖精がそこにいた。 春を伝えて、消えていく妖精、リリーホワイト。 その彼女が何故ここに?という疑問はもっともなのだが、 「じゃ、2人とも待ってなさい。朝御飯作るから」 その話は、朝食が終わるまで持ち越された。 「で、リリーが何でここに?」 「えっと……春なんですか?」 「まだ冬だぜ。早く春が来てほしいんだけどな」 魔理沙の言葉は本心からのもの。 寒い冬は、彼女と一番相性が悪い季節だ。 「……あ、そっか。確かに春かもしれないわね」 「なるほど。霊夢の頭がか」 何かに思い当たった霊夢に、魔理沙の口は言葉をこぼしてしまった。 それを彼女は、すぐ後悔することになるのだが。 「魔理沙。夢想封印とエクスターミネーション、どっちがいい?」 「……スマン」 笑顔ながらも霊夢の凄む口調に、習慣的に魔理沙は頭を下げた。 知らぬは間のリリーのみ。 「冬なのに、春なんですか?」 その、リリーとしては当然の質問に、霊夢はさも当然のごとく応える。 「そうそう。冬だけど春よ。あなたがいるのがその証拠だもん」 「私が…証拠ですか?」 自分を指し、首を傾げるリリー。そんな彼女に、霊夢は断言する。 「あなたが伝えてくれたからね。そのうち、その冬の中の春を見せてあげるわよ。 さておき……結局、紅魔館にお泊りみたいね。レミリアに吸われてなきゃいいけど……」 「あいつが吸われそうになったら、パチュリーが『持ってかないでー』って言いそうだな」 レミリアの服の裾に掴まり、引きずられながらも粘るパチュリーと、レミリアに押されて困惑する自分の弟子。 魔理沙は、そんな3人の光景を思い浮かべて苦笑した。 「えっと、春をですか?」 「春を持ってくのは幽々子だけで十分よ…って、あなたは会ってないわよね」 「集めたのは妖夢だけどな」 話が脱線しても、誰も戻そうとしない。春が2人もいれば、伝染もするだろう。 そんな彼女達をもっと脱線させたのは、外からの声だった。 「ごうがーい、号外でーす!」 「まだ寒いのに、あいつもご苦労だな」 呑気に呟く魔理沙。それとは対照的に、霊夢はやれやれと言わんばかりに立ち上がった。 「お、一部貰ってくるのか?」 「境内にばらまかれると、掃除が大変なのよ。適当に貰って、他に行くように言ってくるわ」 それだけ言うと、彼女は冬の青空の下へと飛んでいった。 ほどなくして、うっすらと聞こえてくる弾幕音。 それもしばらく経って止み、霊夢は新聞片手に戻って来た。 「言って駄目なら実力行使、か?」 「魔理沙が言うことじゃないでしょうに。はい、新聞読む?冥界なんかより音速は早そうよ」 差し出された新聞に、魔理沙は目を落とし……。 「……音速が早過ぎるな」 とだけ呟いた。 「春ですよ~……暖かい春ですよ~…くぅ」 「……コタツは春じゃないわよ?」 「新聞紙でもかぶせてやるか? 少しは春度が増すぜ」 《七曜の魔女、熱愛発覚!?》 記録的な大雪の昨日、紅魔館の魔女パチュリー・ノーレッジさんの熱愛が発覚しました。 お相手は、以前当新聞でも取り上げた、外界からの迷い人○○氏(現在霧雨亭在住) 情報提供者の目撃証言によると、博麗神社へと出掛けていたパチュリーさんが、彼に抱きしめられながら飛行していたとのこと。 また、彼は紅魔館へパチュリーさんを送り届け、そのまま一夜を明かした、との情報も寄せられています。 フィルム切れという致命的なミスを犯してしまいましたが、私も翌日の紅魔館前、お二人のキスシーンを一部始終拝見させて頂きました。 お二人の仲はこれで確実だと思われます。 しかし、気になる関連事件が一つ。 昨日湖の上を二人が飛んでいた所、チルノちゃんが二人にいきなり弾幕を仕掛けたそうです。 (3面、チルノちゃん観察日記に弾幕詳細) 実力にこそ差はありますが、彼とチルノちゃんは弾幕のライバル関係と言ってもいいかもしれません。 ここから先は私の推測ですが、真っ向から正々堂々勝負を挑むタイプのチルノちゃんが、不意打ちを仕掛けるとは私にはどうしても思えません。 ですが、お二人の熱々ぶりに嫉妬したチルノちゃんが、その感情に任せて弾幕を仕掛けた……とするなら、全てが繋がります。 また、この三角関係の事実に対して、パチュリーさんの友人にして彼の家主(兼師匠)の霧雨魔理沙さんが、 果たしてどのように状況を掻き回すのかも注目です。 今年は雪が多く、寒い冬になりましたが、どうやらこれからは熱い冬になりそうですね。 文々。新聞は、この恋に関する様々な情報提供をお待ちしています。 情報提供は私、射命丸までお気軽にどうぞ。 ――それから、数年後 「……出来た」 工房で、炉から出した品を見て、ようやく俺は一息つけた。 良品を作ろうとすれば、材料も良い物を選ばなければならないし、手法も難解になる。 ましてや、人生最高となる品を作ろうとすれば、通常の仕事とは一線を画す難易度になる。 何度も何度も失敗し、その果てに辿り着いたその境地……。 ……う、眠気が。 「……やば。少し休憩…」 パチェには、何度も無理するなって言われてたのに。 この癖は、死んでも直りそうになさそうだ……。 数年前から、俺は師匠の家を出て一人暮らしをしている。 卒業なのか破門なのか、はっきりしないままだけど、師匠との縁は色々な意味で切れてない。 修業の結果、技術だけは師匠に追い付けるようになったものの、肝心の魔力量は今も相変わらず。 そのため、今は紅魔館の近くの廃屋を改装して、魔導具職人として生活している。 職人と言っても、ほとんどが独学なので、お世辞にも腕が良いとは言えないだろう。 それでも、パチェの応援と協力もあって、何とか暮らしている。それが本当に、心強い。 ……ん。少し寝過ぎたかも。 眠気で霞む思考に喝を入れ、少ない荷物をまとめて外出の準備を始める。 緊急時と、スペルカード用を兼ねた携帯魔力炉。 パチェから貰った、補助用の魔導書。 仕事用の道具一式。 そして、さっき完成したばかりの最高傑作……。 忘れ物は多分ない。 フランと遊ばされるなら、戦闘用の魔導具一式くらいは持たなきゃいけないだろうけど……あいにく、全品修理中。 まだ日は出てるし、そんなに強い妖怪も出ないから、紅魔館に行くくらいなら十分だろう。 外は相変わらずの銀世界。視界こそ良好だけど、北風は切り裂かれるような錯覚すら覚える冷たさ。 森羅結界を展開して、俺は冬空へと飛び立った。 「だーかーらーブレイジングスターなんて使ったら壊れるって、前に言ったじゃないですか」 「仕方ないだろ、私も背に腹は変えられなかったんだ。ついでだし、今度は壊れないように直してくれ」 ……パチェの図書館で俺は、師匠のホウキを直している。 話を聞く限りだと、美鈴さんを突破する時にブレイジングスターを使い、その反動でホウキを壊したそうな。 背に腹は変えられないって……いつまで経っても寒がりなんだから。 「ちゃんと許可貰えば、そんな強引な方法使わないで済むんですよ。 それに、俺がいなかったら、どうやって直すつもりだったんですか?」 「お前が来なかったら、本を読みながら自力で直してたぜ。 ……ちょっとパチュリーと話してくるぜ。ホウキの修理は頼んだ」 「気を遣う必要はないんですが……」 パチェは、『作業の邪魔になると悪いから…』と言って、自室に篭っている。 止める暇もなく、師匠も部屋へ行ってしまった。 別に、傍で見ていても支障はないんだけど……。 まあいいか。まずは師匠のホウキを直さなきゃ。 ……今回の報酬、何にしようかな。 「パチュリー。気を遣う必要はないって言ってたぞ?」 「いいの。私がそうしたいだけだから」 変わったな、と魔理沙は思う。 以前なら読書最優先のパチュリーが、席を外すなんてしなかっただろう。 本人はいいと言っているのに、敢えてそうする辺り、互いが互いの事を考えているのだろうか。 魔理沙は、本を読むパチュリーの横顔に目を向ける。 真剣な眼差しの中に、幸せそうな暖かみがあった。 彼が居るからか、本の内容によるものなのか。 「なーに読んでるんだ?」 「――っ!!」 魔理沙が肩越しに覗き込もうとした所、パチュリーは凄まじい勢いで本を隠した。 「……え?」 ただ、一瞬遅かった。魔理沙には、解ってしまったのだ。 「魔理沙……見た?」 「お、おう。私が見間違ってなけりゃ…」 魔理沙の沈黙で、その本がどんなものか理解されたと、パチュリーは悟った。 「あ~…何と言うか、お前も運動してたんだな」 「へ、変な言い回しはいいから。まだ確信が持てないんだけど…」 「そう思う根拠はある、ってことか」 その魔理沙の言葉で、ピタリとパチュリーは固まった。何か言おうと口をぱくぱくさせるが、言葉にはならない。 そんなパチュリーを前に、魔理沙は意地悪く笑う。 「あれから何年も経ってるからな。驚いたけど、不思議じゃないぜ?」 「そ、そうよね。本当は、霊夢に聞くべきなんじゃないかって思うんだけど……」 一度目を閉じ、息を吐いて、再び目を見開くパチュリー。 「――魔理沙。私にちょっとだけ、力を貸してほしいの」 「いいぜ。弟子の不始末だしな」 「強度を上げた分、少し使い勝手が悪くなってるかもしれませんけど」 「そうか?私が全力で使って壊れないなら、それで十分だぜ」 「……相当、使い勝手を悪くしなきゃいけませんね」 直したばかりのホウキに乗り、師匠はふわりふわりとホバリングしている。 強度は上げたつもりでも、壊れない保証はない。 元は、修業時代に俺が自分用に作ったホウキで、それを何度も改造してるから、やっぱり限界がある。 「分解して、一から新しく作り直しましょうか?」 「いや、お前が初めて作ったホウキだ。こんなレアアイテム、滅多にないぜ。ま、お前自身はパチュリーに取られちまったけどな」 「ま、魔理沙……私、そんなつもりじゃ」 「解ってるって、冗談だ。私の弟子を、頼んだぜ」 隣で座ってるパチェは、テーブルの下で、見えないようにしっかりと俺の手を握ってくれた。 その気持ちに応えるように、俺も握り返す。彼女は無言で、師匠に頷いた。 「帰られるんですか?」 「ああ。あんまり邪魔するのも悪いしな」 ……はい? 今、師匠何て言った? 邪魔するのも悪い……って。 「変なキノコでも食べたんですか?」 「私は普通の魔法使いだぜ。お邪魔虫になる気は、これっぽっちもないんだ。パチュリー、頑張れよ」 「……ええ。魔理沙、ありがとう」 ドアから出ようとして、師匠は振り向いた。 その表情こそ笑顔だったものの、どこか……怪しい。 「そうそう。今のお前にピッタリな言葉を思い出したぜ」 「な、何よ……」 柄にもなく、横でうろたえるパチェ。 知識なら師匠以上にあるだろうし、論理じゃ揺らがないと思うけど……。 ――師匠も、隠し玉か何か持ってるのか? 「『案ずるがより、産むが易し』だぜ。意味は解るよな?」 「ま、魔理沙っ!!」 「じゃあな2人共。秋を楽しみにしてるぜっ」 それこそ茹ダコの様にパチェを赤面させて、師匠は凄まじい速度で飛び去ってしまった。 ……まあ、あのくらいならホウキも壊れないだろ。 それはさておき。 「何か困ったことでもあった?」 「え、な、何でよ」 「師匠が言ってたし……パチェがそんなになるの、余程のことでしょ」 幻想郷の人々の会話は、たまに意味が解らなくなることがある。 それでも、少々言い回しが妙なだけで、深い話をしていることに変わりはない。……多分。 「……その、さっき魔理沙と話してたことなんだけど…気持ちの整理が出来たら話すわ。 いつかは、話さなきゃいけないことだから」 「ん……そっか。いつか話してくれるなら、それでいいよ」 ゆったりと、時間が流れていく。 静かな図書館は、時間が止まってしまったかのような錯覚すら覚えてしまう。 冷えた図書館の空気の中で、彼女と握りあった手が暖かい。 ――よし。 「あのさ、パチェ……渡したい物が、あるんだ」 「ふふ。それは…左胸のポケットの中に入ってる物かしら?」 「え!?」 意を決して言い出したにも関わらず、予想外の切り返しに素っ頓狂な声をあげてしまった。 それがおかしかったのか、俺の裏をかいたからか、パチェはくすくすと笑っている。 「五行のどの属性にも当て嵌まらないのに、どの属性でも助けられる物質ね。そこまで珍しい物なら、見えなくても解るわ。 ……多分、魔理沙も気付いてたわよ?」 「師匠も…?」 ああ――有り得る。 蒐集癖のある師匠は、レアアイテムに対する感性が尋常じゃないんだ。 「私へのプレゼントだと思って、取り上げなかったのかしらね」 「師匠と言えど、大人しく渡す気はないよ」 正面から力ずくで来られたら、流石に敵わないけど。 「それ、もしかして……賢者の石…?」 「いや、俺が作れたら愚者の石でしょ」 名前は聞いたことがあるけど、流石にそう易々と作れる代物じゃないだろうし。 「そんなに、自分を卑下することないわよ。創ることに関しては、私より向いてるかも」 うーん……まあ、楽しめるってことは、向いてるのかな。 パチェのおかげで、緊張も和らいだし……うん。 「あのさ、目……閉じてくれるかな」 「どうして?」 「笑われたお返し。絶対にびっくりさせるから」 「ふふっ。それじゃあ、期待させてもらうわね」 パチェは静かに目を閉じる。 寝顔のような、そんな穏やかな表情が、とても愛しい。 ――きっと、彼女と過ごす幸せが当たり前に変わる日が来て、 その笑顔さえ見慣れた日々が訪れても―― 俺はそんな日常を守って、一緒に歩いて行きたい。 だから―― 彼からの、初めてのプレゼント。 特に意識しなくても、その事実だけで、表情が緩んでしまう。 気持ちの浮つきは、抑えようとしてもどうにもならない。 態度に出てしまってるかもしれないけど、やっぱり嬉しい。 握っていた手が持ち上げられる。 指にそっと触れる、微かな感触。思わず私は目を開いた。 彼の言った通り、驚くしかなかった。 私の指に、透き通るように微かに輝く、淡い光。 「え…これ、指輪…!?」 「普通の材料じゃ、どうしても属性の相克で、パチェの魔法の妨げになるからね」 特に装飾もなく、宝石類もない、私の名前が彫られただけの指輪。 魔力を精霊に分け与え、代わりに効果を得る精霊魔法。 その妨げにならない材料は―― 「考えたわね。まさか魔力を物質化するなんて」 ――その根源に当たる、魔力そのもの。 「師匠くらいの魔力があれば、時間もかからなかったんだけど……」 物質化に、どれだけの魔力を要するかは、私は解らない。 きっと彼は、相当長い時間魔力を注ぎ込んで、この指輪を作ったと思う。 それに、私への想いも……っていうのは、ちょっと照れ臭いけど。 ただ、その、嵌めた指が……。 「その、言いたいこと…あるのよね?」 「……指輪を贈って言うことなんて、パチェだって想像つくでしょ」 「でも、解ってても聞きたいのよ。きっと、一生忘れられない言葉だから」 ちゃんと、解ってる。私は魔女で、彼は人間。 私達は、生きる時間の差があり過ぎる。 例えどれだけ多くの幸せを、彼がくれたとしても----いつか、彼が弔われてしまう時、私は幸せのしっぺ返しを受けるのだろう。 それでも、その限られた時間の中で、私達と歩いてくれるなら、その幸福を胸に、生きていくことだってきっと出来る。 共に居られなくなった後でも、歩き続けられる強さをあなたがくれるから。 私は――好きになったことを、後悔したくはないから。 「月並みなことしか言えないけどさ、俺は……パチェと一緒にいたいから。 えっと、その……パチェ、愛してる。俺と…結婚してくれないか?」 ぅ……やっぱり、正面から言われると恥ずかしい。 それでも、私の気持ちは固まってるから、もうあの時みたいに泣いたりしない。 きっと私の顔は赤く染まっていて、嬉しくて言葉も出ないけど、それでも、私が伝えられる精一杯の返事を。 ぎゅっと彼の手を握り返し、頷く。 次の瞬間には、彼に抱かれていた。 いつも変わらない、私だけの――彼の温もり。 「ありがとう……」 「パチェも、受けてくれてありがとな。 俺………師匠には何て言われるか解らないけど、パチェより先に白玉楼になんて、絶対行かないからな」 「どういう、こと…?」 だって、私は魔女なのに。それでも……私よりも生きると言うの? 「人であることにこだわらなければ、手段は結構あると思うんだけどね。蓬莱の薬だけは御免だけど」 永遠亭の妖怪兎や、吸血鬼となった人間、仙人と呼ばれる人々。 彼が話してくれた様々な可能性。それらは、人であることを捨ててでも、私と一緒に歩く術だった。 人でなくなるのは構わないの? そう聞くと、彼は迷わずこう答えた。 「人間でなくなってでも、ずっとパチェを幸せにし続けたいんだ。俺にとっては、そっちの方が大切だから」 うぅ、もう……本当に…。 「馬鹿なんだから…」 「バカで結構。どーせ魔導具のない俺は、チルノと同レベルだよ」 「そうね……確かに、そうかもしれないわね」 彼は人の身で生きて、人の身で死んでいく。 その固定概念に捕われて、私は覚悟を決めていた。 でも彼は、そんな概念を無視して、とっくに私と生きる道を見つけていた。 何が正しいのかは、後にならないと解らない。 だけど、彼の答えが間違っていたとしても、私は……。 「……じゃあ、そんなあなたに、宿題でも出そうかしら」 「うわ……この年になって、宿題出されるとは思わなかったな。注文の間違いじゃないか?」 別に間違いじゃない…と思う。 作ってほしいのは同じだから。 「別に何でもいいわよ。宿題でも注文でもお願いでも。今度は…あなたの指輪、作らなきゃいけないでしょ?」 「……あ」 外の世界の本で、読んだことがある。 夫婦の…絆の証、結婚指輪。 ――何故か、彼は固まっていた。もしかして……。 「忘れてたの?」 「…プロポーズすることでいっぱいいっぱいだったから、そりゃもうすっかり」 「……まあ。そんな状況なら、私だって緊張するから責めないけど。あまり、時間かけないでね?」 本音を言えば、私にくれたのと同じ物がいいけど、それじゃ時間がかかるし……。 「時間かけないでって…どうして?」 「実は―――」 彼の耳元で、そっと囁く言葉。 それは、驚かされた分のお返し。 彼にも原因があるんだし、それくらい……いいわよね? 「――本当?」 彼女からの思いがけない言葉に、思わず問い返した。 あまりにいきなり…って訳じゃないけど、これがとっておきの冗談とかなら、きっと師匠辺りの入れ知恵としか思えない。 もしそうなら、なまじリアリティがある分、タチが悪いんだけど……。 「さっき魔理沙にも診てもらったけど、可能性は高いわよ。……心辺り、あるわよね?」 「ま、まあ。どちらかというと、心辺りがあり過ぎr……ごめん」 久しぶりにジト目で睨まれた。やっぱり本当だ。 「そういうことだから。その、あまり時間かけると、式とか挙げられないし」 「あ、ああ。前と違ってノウハウはあるから、そんなに時間は掛けずに済むと思うよ」 パチェの言わんとすることはよく解る。向こうでも、そういう話はよくあったし……。 あまり負担にならないように、早目にしないとな。 「あなたさえよければ、私も……手伝っていい?」 これまた思いがけない、彼女からの提案。 そりゃ、パチェ程の魔力なら、俺一人と比べて相当早く作れるだろうけど……。 「……いいの?」 「あなたの想いの証が、この指輪なら――私の想いの証を、私が作ったっていいわよね?」 そう言って、パチェは笑って左手の指輪を見せる。 一緒に過ごす時間が多くなってから、彼女はよく笑うようになったと思う。 ……それに比例して、レミリアさんに睨まれたり、血を要求されることが多くなった気がしないでもないけど。 師匠いわく、初めて会った時とは比べられないくらい明るくなったとか。 ――俺は、そんな彼女の笑顔と、この日常を守って生きていく。 この身が何に変わってしまっても、 師匠達が、俺達を置いて白玉楼へ行ってしまっても、 俺はパチェの側で一緒に生きて、一緒に幸せになる。 道は永遠じゃなく、とても長いものだけど、いつかは終わる有限の道。 だから、過ごす時間を大切に、一瞬一瞬を輝きのあるものにしていこう。 「ああ――もちろんっ!」 それは、自分のために。 それは、彼女のために。 そして、まだ見ぬ未来の自分達のために。 いつか、歩いた道を振り返った時、その道を誇れるように。 「パチェ……みんなで、幸せになろうな」 「ええ、そうね……」 カシャアっ!! 「「え」」 声が、ハモった。 突然の閃光と、向こうではあまり聞かなくなったシャッターの音。 聞こえた声の方を見渡せば、本棚の間から突き出たレンズ。 間違いない、あれは……。 「文さん……覗き見とは、いい趣味ですね」 「いえ。覗き見じゃなくて、潜入取材ですよ? お蔭様で、いい写真が撮れました♪」 撮影したことで満足したのか、ひょっこりと顔を出す文さん。 正直、かなり殺気を込めて言ったにも関わらず、普通に流されて返される辺り、俺との実力差が知れるだろう。 俺の腕からするりと抜け出したパチェは、両手いっぱいのスペルカードを構えて、文さんと対峙する。 「本当に……うちの猫は、ザルばっかりねぇ…」 「美鈴さんのことですか?今日はお休みのようでしたけど」 多分……師匠のブレイジングスターを喰らったまま、ダウンしてるんじゃないだろうか。 「……まあいいわ。前はともかく、今回は侵入者だし。毎回記事にされてるし。 とっておきの魔法、見せてあげるわ!」 ちらりと、こちらに目で合図。 (行くわよ。援護してくれる?) (もちろん。俺も全力で援護するよ) 「ふふっ。じゃあ是非とも、幻想郷初の夫婦弾幕を撮らせて頂きますね♪」 あ、笑われた。 それを皮切りに、一気に魔力を開放し、何枚ものスペルカードを同時発動させるパチェ。 彼女に追従するように、手持ちの魔力炉を開放し、術の負担を肩代わりする。 代われるのは……3枚分。今更ながら、パチェの能力の高さに気付かされる。 並行して、自分もスペルカードを数枚取り出し、時間差を加えて連続発動させる。 そんな状況下でも、喜々としてカメラを構え、迫り来る弾幕を撮影する文さん。 フラッシュが焚かれ、シャッターが切られる度に、地獄の釜をひっくり返したかのような凶悪密度の弾幕が掻き消されていく。 それでも、弾幕は終わらない。流れ続ける濁流のように、絶えず俺達が展開し続ける。 ひとまず、俺達の魔力が尽きるか、文さんが被弾する頃までは。 ……結局その後咲夜さんが来るまで、疲労困憊の俺達はしっかりと文さんにインタビューされてしまい――― 《あの熱愛カップルが遂にゴールイン!?》 先日、パチュリー・ノーレッジさんと○○氏の熱愛記事を書いてから早○年。 周囲でやきもきしていた方も、行け行け押せ押せと煽っていた方もお待たせ致しました。 この度、お二人が結婚することが私の密着取材で判明しました! しかしながら、紅魔館への潜入取材だったので、完全な取材に出来ないまま逃げなければならなかったのが、心残りと言えば心残りでした。 挙式は後日、博麗神社で行われる見通しで、巫女の霊夢さんの話では『お賽銭○千円で、誰でも歓迎するわ』とのことです。 また、幻想郷の宴会好きな方々もこの期に集まり、当日は晩春の再現と言えるような大宴会になる見通しです。 参加なさる際は、お賽銭と宴会用の料理(もしくはお酒)を持参することをお勧めします。 ここで私からの注意事項ですが、新婦のパチュリーさんにお酒は飲ませないで下さい。 理由は……まぁ、言うまでもないので省略しますが、どうやら3ヵ月だそうです。 理由が解らない方は、当日の式の中で報告があると思いますので、それまで待ってて下さいね。 どうやら幻想郷には、安全もプライバシーもないみたいだ。 魔法はあっても、向こうのような便利さも、快適さもあまりない。 ――それでも、ここには幸せがある。 それは、自分で選んだ、自分が生きる道。彼女と歩む、未来への道。 幸福があるという意味なら、幻想郷はまさに楽園ということだろうか。 少なからず波乱があるにしても、俺の幸福は確かにここにある。 他の誰でもない、彼女の側に。 ・後書きのようなもの 人を愛するなら人のままで。蓬莱人を愛するのなら共に蓬莱人となるか、それとも呪縛から解き放たれるのか。 じゃあ妖怪や魔女を愛するのなら、添い遂げようと願うのなら、どのような答えを見つけるべきなのか。 ……こう書くと硬いですが、要はパチェと一緒に生きるためにはどうするか。それを考えた結果がこれです。 てゐだって長生きして妖怪化したのなら、人間が妖怪になってもいいじゃないですか。(それを仙人と呼ぶのかもしれませんが) 後書きはいつも長くなりがちなので、組み込めなかったネタだけ最後に晒して締めますね。 ・お蔵入りネタ1 「はい。あなた用の指輪、完成したわよ。 日&月符『ロイヤルダイヤモンドリング』」 「いやそれ嵌めれないから」 文花帖のスペカはものすごくタイムリーだったんですよ……。 ・お蔵入りネタ2 「ふふっ。パチュリー様のお子様……♪」 「……小悪魔。その本、読ませてくれないかしら?」 パチェよりも喜んで、たまひよとか眺めてる小悪魔とか。 ・お蔵入りネタ3 「レミィ、今すぐ彼から離れて。さもないと――」 「安心してパチェ。私もちょっと喉が渇いただけなのy」 「……そう、残念ね。 日&水符『ランドリーサイクロン -Full Auto-』!!」 ゴウンゴウンゴウン……。 「せ、洗濯機!?」 「しっかり水洗いして乾燥までするわよ」 本編で伏線張ってたのに回収できなかったからここで。 以上です。乱文失礼しました。
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パチュリー17 Megalith 2012/02/28 ――舞踏会をやるわ―― バカなんじゃないかと思う。 言い出したレミィも。 それを聞いてノリノリの紅魔館の皆も。 お誘いをかける女の子に囲まれてデレデレしてるあいつも。 ……そんなあいつを見て、拗ねている私も。 「パチュリー様……いいんですか?」 「……」 いいわけない。 「とられちゃいますよ……?」 解ってる。そんな事。 こうやって、ウダウダしている間に。 あいつは、他に子と一緒に、幸せそうに笑っている。 そして、私の前から――いなくなるのか。 「……っ」 「パチュリー様……?」 そんな事は、ダメだ。 許さない。 座って、暢気に本を広げている暇は無い。 とられて――たまるか。 「ダメ」 「え?」 「ダメよ。他の奴にとられるなんて許さない。あいつは、○○は、私の――」 今宵の舞踏会は、穏やかに終わりそうには無かった。 * ここ紅魔館の主様に、舞踏会をやる、そんな話を聞かされたのは今日の朝だった。 え?いつやるんですか?――なんて間抜け面で問い返したら 「今夜」 ――だそうだ。 気まぐれ、なんだろう。 ついこの間も24時間耐久ドロケイin紅魔館なんてイベント企画しやがった。 ケードロが正しい表記だっていうのに。 ……まあ、いずれにせよ、今に始まったことじゃない。 何だかんだと今までの気まぐれイベントは全て楽しかったし。 今回も楽しめば良い。 と思っていたのだが。 「○○さ~ん?」 「や、やあ、小悪魔……」 赤毛のお姉さんの登場。胸はでかい。 「どこ見てるんですか」 「いやあ……」 嫌な予感しかしない。 妖精メイド達の舞踏会のお誘い――からかい半分なんだろう――を切り抜けて五分もしない内に小悪魔に捕まった。 いや本当に、嫌な予感しかしない。 「あ、あの……また、パチュリー、怒ってた……?」 「ええ、ええ。まあ怒ってるって程でも無いですけどねえ。機嫌は悪かったですよ」 またか。 毎度毎度、何かある度にパチュリーの機嫌を損ねたり、怒らせたりしてしまっている。 原因は俺にあるらしい。 でも、何故俺が悪いのかがわからない。 聞いても教えてくれないし、考えてみても心当たりが無い。 パチュリーに謝りに行けば、早く気付けだの、鈍感などと怒られる。 全く謎である。 「まあいつもは、理由を聞く度に、うわあとか、それは無いわあ、とか思ったりしてましたけど」 「思ってたのか」 傷つくぞ。 「今回はいいでしょう。比較的、些細な事ですからね」 「でもなあ」 「だから」 一度を言葉を区切って、小悪魔は続けた。 「今夜の舞踏会、時間空けといてくださいね! パチュリー様が話があるらしいですよ」 「は?」 いきなり何を、と言う前に小悪魔は走り去っていた。 * 廊下の隅で見ていた。 そりゃあ、小悪魔の胸は大きいし、あいつも男だからしょうがないんだろうけど。 イライラする。 でも、それだけ。 イライラするだけで何も出来ない。何も言わない。 勝手に私が機嫌を悪くして、黙ったままあいつに辛く当たる。 最低だと思う。 理由なんて正直に話せるはずが無い。 他の女の子と楽しくしているのを見て嫉妬した。 だから機嫌が悪いんです。 そんな事言えるはずが無い。 それだけじゃない。 たまに、可愛いって言われたり、優しくされても、同じ。 同じように、辛くあたったり。 本を投げたり。 無視したり。 ……スペルカードを持ち出した事も有ったっけ。 思い出して泣きそうになった。 でも――好き。 どうしようも無く不器用で、臆病だけど。 これ以上は――もう沢山。 「パチュリー様、パチュリー様」 「ん……あ、小悪魔」 「やりましたよ。後は……パチュリー様次第です」 「……うん」 本当は私が言うべきだったんだろう。 私と踊って欲しい――そんな、簡単な一言を。 「ありがとう……」 「いえいえ、いいんですよ。いい加減、進展してくれなきゃつまらないですしね」 「うん……」 「ここまでしたんですから……って言っても殆ど私は何もしてないですけど……とにかく、そろそろどうにかしてくださいよ?」 「うん……頑張る」 ずっと何も出来なかった。臆病だった。 けど、それはお終い。 今夜、決着をつけてやる。 * 日が落ちた。 時刻は6時を過ぎた頃だった。 寒くない。 もう春が来る頃だろうか。 花粉は辛いし、眠くなる季節だ。 でも花見は楽しいし、春になれば満開の桜が見れる。 そんな他愛の無い思考は、控えめなノックに掻き消された。 「○○さーん? 準備できましたー?」 「ああ、うん。もう大丈夫だよ」 「失礼しまーす……って、わお」 「どうかな……?」 タキシードなんて着たこと無い。 スーツも似たような物だとは思うが、何というか、重みが違う。 「似合ってますねえ! これはパチュリー様もメロメロですよ!」 「はは……お世辞でも嬉しいよ」 「いやいやいや! はーそれにしてもこんな似合うとは思いませんでしたねえ。○○さん、ずば抜けた美形でもないのに。雰囲気ですかねぇ」 「いやあ、俺に聞かれてもねえ……」 褒めてくれるのは嬉しいけど。 「それで、話は変わりますけどね。今夜……パチュリー様を怒らせたら承知しませんよ?」 「うっ……手厳しいなあ……」 「当たり前ですよ。今度怒らせたら何度目になると思ってんですか。次が最後だと思ってくださいよ」 「むう。まあ、しょうがないか。……うん、頑張るよ」 「はいっ、頑張ってくださいね!」 そうだ、頑張らなきゃな。 ……最後。 つまり、そういうことなんだろう。 「うん、やっぱ、謝った方がいいよな」 間。 「は?」 呆けた顔をするな小悪魔よ。 「今まで、怒らせてきて、今回が最後なんだろう? 多分、次しくじったら紅魔館追い出される的な」 「え……いや、○○さん、あの」 「みなまで言わずとも解る。任せろ」 「え、あの、任せられません……」 とにかく。 与えられた最後のチャンス。 殺さないようにしなければ。 「○○、そろそろ時間……って、あら、小悪魔もいたの」 「お、咲夜さん」 「咲夜さん……」 音も無く現れたメイド長。 気配を殺して登場するのは俺の心臓に悪いですよ。 「どうしたの、○○は何か吹っ切れたような決意したような顔で。小悪魔は、それ女の子がしていい表情じゃないわよ」 「ええ、その……かくかくしかじかで……」 「あー……まあ、なるようになるわよ……多分」 何か話しているようだが、何を話しているのかは解らない。 そんな事よりも、大切な事がある。 謝ろう。 怒らせたんだから。 ――今にして思えば、バカな結論だったと思う。 怒らせたから、謝る。 そうする事が、一番楽だった。 * 俺が小悪魔や咲夜さんに小言を言われている間に舞踏会の時間となった。 神社の宴会のような豪快さは無い。 優雅な賑やかさがあった。 よく解らないクラシックの様な音楽を流しながら、食事を楽しむ者、踊りを楽しむ者と様々だ。 ……まあ、ほとんどが妖精メイドだが。 客人はいないらしく、紅魔館内の者だけだった。 ……さて、どこにいるかな。 テーブルや椅子の間、メイドの壁を通り抜けながら、パチュリーを探す。 どっちを見てもメイドばかり。 たまに美鈴や小悪魔。咲夜さんやフランちゃんがいる。 パチュリーは、いない。 「どこだよ……」 「ここよ」 「うおわぁっ!?」 背後からの突然の声。 振り返ってみると、パチュリーがいた。 「全く」 「気配を消すな、気配を……ん?」 こいつぁ……。 黒いドレスに身を包んだ少女。 いつもは無造作に垂らすだけの髪は、綺麗にセットされている。 化粧もしているが、濃いという印象は受けない。 薄く、本当に少しだけ。まあ、化粧なんて元から必要ないって言うのもあるのだろう。 胸元には花をモチーフにしたリボン。 鎖骨や微かに見える谷間が、艶かしい。 あ……パチュリーって着痩せするんだ……。 「何……じろじろ見て……」 「あ、いや、ごめん」 「……まあ、いいけど。あなたに見られるなら……まあ、悪くないわ」 最後はボソボソとして聞き取り難かった。 「それで、どうしたんだよ、そんな格好してさ。ガラじゃないだろうに」 「舞踏会だからよ。流石にいつもの格好っていうのもどうかと思って」 「なるほどなあ」 しかし、見ればみるほど。 ううむ、悩ましい。 「それで……その……」 「うん?」 俯きながら、パチュリーは何かを言おうとしている。 そんなパチュリーも可愛いなあ。 ……。 って違う! すっかり、当初の目的を忘れていた。 謝らなきゃいけない。 「パチュリー!」 「ん? どうしたの、いきなり大きな声を出して……」 「言わなきゃいけないことがあるんだ」 「ええっ……?」 「その……、俺……「待って!」謝らなきゃ……って、どうした……」 言葉の途中で区切られる。 一大決心した後だってのに。 「このパターン、嫌な予感しかしないわよ……。先に私から言わせて貰うわ。いいわね?」 「お、おお……」 人が殺せそうな勢いですごまれたら、首を縦にふるしかない。 「その、ね、今晩、私と踊って……い、いや、やっぱ何でもない!」 「え……どうしたんだよ……」 「そう、そうね。私もいきなりすぎたと思ったわ。うん。ちょっと食事にしない? 後、ワインとか飲んだり。お腹すいたでしょ? 喉乾いたでしょ?」 そう言われればそうだ。 お腹も空いたし、喉も渇いた。 「あ、ああ……」 「じゃ、じゃあ行きましょう、ね? あ、ほら、あのテーブルが空いてるわよ!」 そう言って、パチュリーは俺の手を取り、強引に歩き出す。 後ろから見た首元は真っ赤で、握った手は汗ばんでいた。 * テーブルにつき、簡単な食事を摂る。 量は決して多いとは言えないが、どれも素材は極上だった。 ワインも、とりあえず、安いものではないのだろうなと想像できる。 「それでさあ、用事って何だよ?」 「う、うん……」 俯きながら、ワインを飲むばかりのパチュリー。 小悪魔の言っていた、パチュリーの用事。 はて。何か。 ワインを飲む度に、顔を上げ、何か決心したような表情にを浮かべる。 これほどの表情をするような話題なら大事な事だろうと思い、真剣にパチュリーの顔を見つめ返すと、途端に顔を真っ赤にして俯いてしまう。 「……大丈夫か?」 「だ、大丈夫だから……ちょっと、待って、お願い……」 そうして、またワインを一口。 ……酔わないだろうか。 「う、うん、よし」 「お?」 今度の表情は違って見える。 「そ、その、○○! わ、わ、私と、一緒に踊らない……?」 「へ?」 真っ赤なパチュリーの顔は、林檎のようだった。 * ゆったりとした音楽。 格調高く、名のある音楽家が作り出したのだろうと容易に想像がつく。 そして俺は、拙い足捌きで、間抜けな踊りを見せていた。 「ほら、足はこっち」 「お、おお……」 「バカ。だから、こっちだって」 酒が回ったのか、饒舌である。 さっきの様な緊張した様子は無い。 それにしても。 「ダンスってのも、案外難しいな……」 「まあね。でも、いくら初心者でも、普通はもっとまともにやるわよ」 「まじか……」 「まあ、悲観すること無いわよ。私が教えてあげるし、それに教え子の出来が酷ければ酷いほど、教師は嬉しいものよ。教え甲斐があるわ。誇っていいわよ」 「嬉しくねえなあ……」 「嬉しがりなさい」 言いながら体を密着してくるパチュリー。 当たる。でかい。何がとは言わない。 「すけべ」 「ってえ!」 思いっきり足を踏まれた。 痛いぞ。 「全く……じゃあ、まず、足は右ね」 「っつつ……む……」 無様にならない様に、リードしてくれる。 何となく。 何となく悔しい。 「ほら、こっち」 「ああ、ん、あ、こっちか……」 「そう。上手ね」 機嫌良さそうだなあ。 酒が回ってテンション上がってるのかな。 「ふふふっ」 「……わーお」 「? どうかしたかしら?」 「いや、何か機嫌よさそうだなって……」 「機嫌? そう、そうね。機嫌、良いわよ」 「そ、そうか……」 「ふふっ」 「……」 本当に機嫌が良いんだな。 こんな風に笑うパチュリーも、殆ど見たこと無い。 というか、見たことが無い。 笑うときはもっとこう、 ――……無様ね……(にやっ 温情も何も無い。氷そのもの。 だというのに。 「楽しいわね……うん、楽しい」 「……」 いや、本当に機嫌が良いらしいな。 「やっぱ、さ……」 「どうしたの?」 「そうやって笑ってる方が、可愛い」 思わず、口に出る。 その瞬間、パチュリーの体が、止まった。 「……な、ななななな、何をっ」 「いや、いつもあまり笑ったの見たこと無いからさあ。新鮮だし。後はやっぱ、うん、可愛いし」 「――っ!」 あ、やば。 いつもこのパターンだ。 可愛いと思って、うっかり可愛いと口にすると、何故かへそを曲げる。 酷い時は、俺がベッドの上で目覚めることになる。 もうちょっと短気を治して欲しいなあと思う。 しかし。 「……もう、ばか」 「……え?」 何も無かった。 何事も無かったように、ダンスを再開する。 「ど、どうしたよ。いつもは無視したり、ビンタしたり、スペルカード使ったりしてただろ? なのに今日はどうした!?」 「……いいの、今日は。……その、可愛いって言ってくれて……嬉しかったわ」 「――!!」 何事だ。 パチュリーが、素直だ……! これが酒の力なのだろうか。 「さ、続きよ、続き。あなた、ただでさえ下手なんだから……って、あれ、あ、きゃっ」 「!? パチュリー!」 足を踏み出した瞬間、転んだ。 目立った怪我こそ無いが、転ぶ時に大きな音がした。 「ったたた……」 「大丈夫か?」 「う、うん……っ」 「どうした!? どこか痛いのか!?」 「ちょっと、足が……」 「足?」 「足がどうかしたのかしら?」 音を聞いたのか、咲夜さんがやって来た。 「これは……捻挫、かしらね。無理すのは良くないし……そうだ、○○。パチュリー様を、部屋まで送ってあげなさい」 「「えっ」」 これ以上無く、綺麗にシンクロした声だった。 ――そうして、俺は、謝る機会を逸してしまった訳だが。 後になって思うと、ここで謝らなくて良かったのだと、感じられる――。 * 「ごめんなさい……」 「良いって、別に」 「……」 パチュリーを部屋まで運んで来た。 肩が触れるか触れないかの間を空けて、俺とパチュリーは、並んで、ベッドに腰を下ろした。 それきりだ。 それきり。 一言、二言で会話が終わる。 それきりだ。 「……ごめんなさい。私が、運動音痴で……つまらない思いをさせて……」 「……いや、そんなことはない」 「嘘、言わなくても良いわよ、別に……」 「嘘じゃないさ。楽しかったぜ。それに、パチュリーをおんぶしたりとかもさ、結構、役得だったよ」 「……ばか」 そんなのばっかりだった。 いたたまれない空気というわけではない。 何となく、暖かい。 「……ねえ」 パチュリーがしなだれかかって来る。 心地良い重さを肩に感じる。 鼻腔をくすぐる匂い。 あ……眩暈。 「……何だ?」 「今日は……何でだと思う?」 「え?」 「今日、どうして、あんなに素直だったと思う?」 「……いや、わからん」 ふふ、と。 笑ったのか。 「今日でね、決着、つけようと思ったの」 「決着? 何の」 「解らない? ここまでしても……まだ、解らないかしら?」 そう言って、パチュリーは俺の首に手を回す。 不意を突いた、強い、女の子の、匂い。 あ……また、眩暈。 「ぱ、パチュリー……?」 「ねぇ……」 ほぅ、と息を吐き出す、目の前の少女。 火照っているのか、密着する体はとても熱い。 あてられる。 熱を振り払うように、俺は声を出す。 「そ、そうだ! パチュリー! 俺、言わなきゃいけないことが」 何を? しかし、俺の言っている事など聞こえなかったかのように、パチュリーは言葉を紡ぐ。 「ほんとうに……わからない……?」 「――っ」 解らない。 そう、解らない。 ――いや。 「待ってくれって、俺、お前に」 お前に――何? 何を言う。 ――謝るんだ。 何を? 何を謝るっていうんだ。 解らない。 でも、謝らなきゃ――それが、一番楽だから。 だっていうのに。 「ぁ……」 「パチュリー……」 抱き締めていた。 きつく、きつく、抱き締めていた。 細い腰、腕。似合わず大きな胸。 首筋には水滴がぽつり、ぽつり。 直視したらどうにかなりそうだった。 熱にあてられる。 何かを誤魔化すように、押し倒さなかった俺の理性は賞賛ものだと、阿呆な事を考えていた。 「あー……ごめん……」 「……ううん、いいの。嬉しい」 「いや、今までの事とか、さ。色々……」 「……そうね……でも、いいわ。許してあげる。特別よ」 「ははは……そうだな、ありがとう」 ねえ、と、パチュリーが一言。 「終わり? これだけ?」 「……いや」 終りじゃない。 ――とっくに解ってた。自分の気持ちは。 相手の気持ちも、まあ、何となく。 ただ、確信が有ったわけじゃなくて、何となく。 絶対だって自信を持っていたわけじゃない。 拒絶される確率もゼロじゃなかった。 ゼロじゃない。 それが、怖かった。 変わることが、ぬるま湯を出ることが、怖かった。 だから、鈍感の振りをしていた。 臆病だったな、と思う。 バカだったんじゃないかとも思う。 でも、今は、違う。 流されているだけかもしれないけど。 今は、違う。 「終りじゃないさ、まだ」 密着させていた体を離し、パチュリーと俺の間に僅かに隙間を作る。 顔と顔。 自然と見つめあう形になった。 「その、な。改めて言うとなると恥ずかしいんだけどな……言った方が良い……?」 「当然よ。当たり前でしょ。それとも、ここまで来て逃げる気? 流石に次は命はないわよ」 ジト目で見るんじゃない。 物騒な事を言うんじゃない。 「あー……その、うん。パチュリー」 「はい」 「好きだ」 「私も、好きよ」 簡単な一言だ。 口にしてしまえば呆気ない。 それを口にするのに――どれほどの遠回りをしてきたのか。 「これで終りってのもあっさりしすぎてるわね……そうだ」 「ん?」 「キス……しない?」 「まだ、想いが通じ合って三分経ってないぞ」 「いいのよ。あなた、人間だし、すぐ死んじゃうでしょう。早め早めの行動よ」 「まあ、いいけどさ……」 パチュリーが目を瞑る。 良い匂いだなあ、とか。 顔小さいなあ、とか。 やっぱ可愛いなあ、とか。 そんな事ばかり考えていた。 「……むー。はやくして」 「あ、ああ、ごめん」 「全く……」 「ん、じゃあ、するよ」 「うん」 どちらとも無く顔を近づける。 微かに、唇の先と先が触れた。 そして。 * ――結婚式をやるわ―― バカなんじゃないか、と思う。 言い出したレミィも。 それを聞いてノリノリの紅魔館の皆も。 そんなノリノリな女の子に囲まれてデレデレしてるあいつも。 ……そんなアイツを見て、拗ねている私も。 「パチュリー様……いいんですか?」 「……」 いいわけない。 「とられちゃいますよ……?」 「……それは、無い。あいつだし……」 「おやぁ、自信満々ですねえ! これが愛の力って奴ですかパチュリー様!」 「うるさいだまれ」 こうやって、ウダウダしている間に。 あいつは、他に子と一緒に、楽しそうに笑っている。 でも、私の前から――いなくなったりしない。 「それにしても、結婚式なんて、急すぎじゃないですかね。パチュリー様と○○さんが付き合いだして、まだ一ヶ月と少しでしょう?」 「私も、最初はそう思ったんだけどね……まあ、いいんじゃないかしら」 早め早めの行動。 告白直後のキスとか。 まあ、流石に結婚式は早すぎたような気もするが。 「お似合いですよ、パチュリー様」 「そうかしら?」 純白のドレス。 あの、舞踏会の時とは対照的な服だった。 「それにしても、○○さん、楽しそうですねえ。……とられちゃうんじゃないですかあ?」 「……」 そんな事は――無いと思う。 でも、万が一が。 「……っ」 「パチュリー様?」 とられて――たまるか。 「ダメ」 「え?」 「○○っ!」 声を大きくしながら、○○の元へ歩いていく。 何事かという様子の○○。 強引に手を取って、妖精メイドの包囲の中から引きずり出した。 ……キャーキャーうるさいわね。 「パチュリー? どうしたんだよ」 「……他の奴にデレデレするなんて許さないわよ。あなたは、私の――」 今宵の結婚式は穏やかに終わりそうになかった。 おしまい Megalith 2012/08/30 パチェ「むきゅっきゅきゅ、あー効くわー」 ○○「このくらい一人でやりなよ。だいたい紅魔館の人に頼めばいいでしょ」 パチェ「駄目なのよ」 ○○「咲夜さんなんか得意そうでしょ」 パチェ「咲夜はだめ。」 ○○「どうして。」 パチェ「咲夜は体が柔らかすぎる。だから、加減が、むきゅ、わからない痛た!」 ○○「強くしすぎた、このぐらいかな。小悪魔さんとか」 パチェ「あいつもだめ。なぜなら、私とは骨格部分以外の人体組成が違いすぎるの。」 ○○「骨以外?」 パチェ「そう、あいつは胴体に対する下肢の比率がが平均水準より高いわ。 あと、大胸筋および大臀筋に付着する体脂肪分量がこれまた多い。 参考にならないのよ。」 ○○「スタイルよくてバインバインってことね。」 パチェ「卑近な言い方ではそうなるわ。」 ○○「それで僕?」 パチェ「そう。レミィや妹様では体長が違いすぎるわ。 美鈴にやってもらった時はいきなりナパームストレッチをかけられた。」 ○○「プロレス技じゃないの。」 パチェ「キン肉族三大奥義くらい痛かったわ。あの子、できる。」 ○○「わけわかんないです。」 パチェ「わたしはもっとわけわかんなかった。それであなたというわけよ。」 ○○「パチェさんに似てひ弱のぺったんこであると。」 パチェ「短くて小さくってかむってるってとこは違うわね。」 ○○「なんで知ってるの」 パチェ「……」 ~~~~~~~ パチェ「これからの魔法使いはね、頭脳だけじゃだめなのよ。」 ○○「はあ。」 パチェ「体をうまく使えば、知的活動も数段レベルアップするわ。体がほぐれれば頭も冴えてくるのよ。」 ○○「うまく、使えてる?」 パチェ「今は、まだ、ちょっと」 ○○「左手が左耳より右に行かないってどうなんだろ」 パチェ「誰にでも初めてはあるのよ」 ○○「もう2カ月目だよ」 ~~~~~~~ パチェ「これではラチがあかないわ。なにか一発逆転を。」 ○○「ストレッチは地道に続けるものだよ。」 パチェ「できる人間の言うことよ、それは。」 ○○「誰にでも初めてはあったんだってば。できる人間も地道に練習したからこそ…」 パチェ「うるさい!今いい方法を思いついたわ。」 ○○「いやな予感」 パチェ「今まではわずかな力でやってもらってたのよ。」 ○○「うん」 パチェ「倍の力だったら倍の効果のはずよ。」 ○○「いやその」 パチェ「3倍だったら、3倍効果よね!」 ○○「やめようよ。」 パチェ「試さないうちからやめるの?科学的態度にはほど遠いわ。」 ○○「理性なき科学は暴力だよ」 パチェ「科学なき理性は無力よ!やってちょうだい!」 ○○「いいの?」 パチェ「魔女に二言はない!」 ○○「えいっ!」 パチェ「ぐわっ!ぎゃあーー!」 ○○「すごい叫び声出た!えーと、ファンの人ごめんなさい。 それよりどうしよう、背骨がイワナの焼き魚みたいだ。」 パチェ「…やればできるじゃない。」 ○○「生きてるーッ!」 パチェ「効いた実感あったわ。見た目どう?少しは柔らかくなった?」 ○○「見た目?イワナの焼き魚。」 パチェ「バキバキじゃないの!!」 ○○「最初からわかってよ!どんだけ身体感覚鈍いの!」 ~~~~~~~ ○○「だいたいね、道具使えばいいでしょうが。」 パチェ「むきゅ~」 ○○「今は外界の健康ブームも過ぎ去って、こっちにたくさん道具も流れついてるんだから」 パチェ「むきゅきゅ~、そこ、もうちょっと右」 ○○「何もこんな人力に頼らなくっても。それこそ精霊使うなり、専用の魔法生物作るなりね。」 パチェ「うふー。」 ○○「お役に立てるのは嬉しいけど、僕がいないときとかどうすんの。」 パチェ「当然だわ。来てくれる時まで、コリをためこむのよ。」 ○○「こまめにやんなきゃストレッチの意味がない。今やってるのはマッサージだけど。」 パチェ「あなたの考えはそこらへんが人間ね。浅はかだわ。」 ○○「浅いかな。」 パチェ「浅すぎる。そのうち海難事故が起こるわ。それらの無生物には欠けているものがあるの、何かわかる?」 ○○「?」 パチェ「シンキングタイム、10000000000ナノセコンド。」 ○○「10秒ね。えーと、こうやって話相手になれるってこと?」 パチェ「おしい。チャンスもういっこ」 ○○「えー?うーん、わかんない。どう考えても無生物の方が効率いいでしょ。疲れないし。」 パチェ「こまめに休んでいいわよ。先は長いんだから。」 ○○「筋肉痛になりそう」 パチェ「体温よ。」 ○○「え?」 パチェ「正解は体温。テンパラチャー、サーモグラフィー、ナイトビジョンゴーグル。わかる?」 ○○「わかるけど…どういうこと?」 パチェ「疲労除去には人肌より少し高い温度が一番いいのよ。掌の熱量は背中より高い。特に男性は女性より体温が高いからちょうどいいわ。」 ○○「それこそ」 パチェ「え?」 ○○「それこそ人造生命体でいいじゃん。体温も思いのままで。遠赤外線とかマイナスイオンとか思いのままだろうし、マジノ線とか。」 パチェ「1936年。わかってないわね、あなたは。」 ○○「わかってないのかな。」 パチェ「わからないこともわかっていないわ。心理的効果を忘れてるじゃない。」 ○○「なにそれ。」 パチェ「なにそれとはなによ。」 ○○「科学的じゃない。パチェらしくもない。」 パチェ「私も女性ということよ。」 ○○「女性が科学的であっちゃいけないのか」 パチェ「あなた、フェミニズムに熱くなりすぎるわ。きっとマザコンね、さもなくば思春期だわ。」 ○○「言いがかりだ、たぶん二次性徴期なんだろう」 パチェ「アダルトチルドレンを名乗るなんておこがましい。ともかくね、こうしてあなたの手に触れていると…ふわあ」 ○○「僕も眠くなってきた。ふわあ。」 パチェ「なんだかね、脳波がベータのゆらぎからアルファーの領域に入って…ふう」 ○○「眠そうだね。」 パチェ「愚問ね。ところで…」 ○○「何だい?」 パチェ「……」 ○○「パチェ?」 パチェ「じゅるっ。…寝てたわ。」 ○○「もう寝る?」 パチェ「……」 ○○「パチェ?」 パチェ「……」 ○○「寝ちゃったか。しかし、疲れた。僕もストレッチしないとな。 でも幸せそうな寝顔だな。…おやすみ、パチュリー。」 パチェ「…行かないで。」 ○○「え?」 パチェ「……」 ○○「寝言か。」 パチェ「……ずびっ。はっ、寝てた…」 ○○「…僕は帰るよ、お休み。」 パチェ「だめ。」 ○○「だってそんな眠そうじゃん、まぶたほとんど閉じてるし。」 パチェ「さっき言いかけたことだけど…」 ○○「いつ?」 パチェ「21行上。ところで、の次の言葉。」 ○○「22行上だね。最後にそれ聞いてから行くよ。」 パチェ「あのね、○○、ちょっと耳を貸して。」 ○○「うん、……わっ」 パチェ「……むきゅきゅ、つかまえた」 ○○「これが言いたいことなの?ボディランゲージだったなんて」 パチェ「惜しいわね。『お返しの全身対全身全方位弱圧力加圧健康法よ』というセリフが来るの」 ○○「つまり、人間抱き枕」 パチェ「まだ終わってないの、『お返しの全身対全身全方位弱圧力加圧健康法よ、来てくれてありがとう』が全文」 ○○「どういたしまして」 パチェ「あったかい、いい匂い。ね、心理的効果てきめんでしょ」 ○○「返す言葉もないね。」 パチェ「ふふふ。結婚してくれる?」 ○○「唐突だね。」 パチェ「結婚と恋愛と掃除のチャンスは唐突にやってくるの。」 ○○「パチェとなら、ニ十回はできるよ」 パチェ「『できる』なんてイヤ。…するの?しないの?」 ○○「…」 パチェ「…魔女は、こわい?」 ○○「……」 パチェ「……」 ○○「……」 パチェ「……」 ○○「……」 パチェ「……」 ○○「…しよう。」 パチェ「……」 ○○「結婚しよう、パチェ。ずっと、僕のそばにいてほしい!僕も君を守ってみせる!暖かい家庭を作ろう! そのためにまず、何よりいまここで子どもを作ろう!」 パチェ「じゅるり」 ○○「ん?」 パチェ「すぅ、すぅ」 ○○「…………おやすみ。」 おわり 頭休めの骨休め 長編の 合間に短編 書いてみる 電波のままに 暇のまにまに もやしもみしだきたい Megalith 2012/09/21 普通の魔法使いが蔵書を持ち去る時以外は大図書館は静かなもので 紙の擦れる小さな音だけが広大な空間を彩っていた パラパラとページをめくる手を止めて一息つく 紅茶を一口 次の本に手を伸ばし、少しばかり姿勢を正すと衣擦れと椅子が僅かにきしむ音が 不意に空気の流れがわずかに乱れたことに気付く 紙面に眼を落としたまま読み進める 煩くないのなら気にする必要も無い 焼き菓子の香りが飛び込んできたので視線を移すと 不揃いな物が小さな皿から今にも零れ落ちそうに山を作っていた 一番上の一口サイズのソレを手にとって頬張る サクサクとした食感と共に甘さが口の中に広がってゆく 指に残った欠片を舐めとり紅茶で流し込むと自然とため息が出た ――合わないな 紅茶を入れた人と焼き菓子を作った人が違うのだから当然か また一つ焼き菓子を手に取り口に運ぶ 紅茶にミルクを足して赤と白がゆっくり混ざり合う様にしばし見入ると自然と口が開いた 「皆にお土産を渡すのね」 「手ぶらで訪問するなと婆ちゃんが言ってたんで」 本にしおりを挟んで閉じて机の上を羽根箒で清める きっとこの焼き菓子は喜ばれたのだろう 零れ落ち僅かに広がった欠片を一纏めにしてにして捨てる 「私よりも先にレミィに会いに行くのね」 ――捨てたはずなのに、顔がこわばっている 「礼儀を欠く訳には参りません」 いつもは礼儀という物を渇望していたはずなのに 今になって疎ましく思うとは―― ――疎ましいなら捨ててしまえ 「貴方、魔理沙の箒に乗ってきてるのよね」 「そりゃぁ空も飛べない一般人ですから。誰かに抱えて貰って来る訳にも行きませんし」 改めて確認するまでも無いことだ 彼の最初の訪問はいつもにぎやかな彼女と一緒だったのだから 長椅子にだらしなく体を投げ出して横になっている 慣れない飛行と家主のプレッシャーに晒されて参っているのはいつもの事 ――思うままに振舞おう 好機と判断して仰向けに晒されてる腹に腰を下ろした 「重い」 なんと言われ様ともやめる気は無い 呼吸の都度上下する腹はすわり心地は良くないものの、気分はとても良い ここで本を読んでみるのも楽しそうだ 「どいてくれ」 「嫌よ」 「苦しいんだが」 「喋れる余裕あるじゃない」 衣擦れの音と椅子の軋む音が耳に心地よい 「どうしたら勘弁してもらえるんだ?」 ほとほと困り果てたその表情に程よく征服感を満たされた 「そうね…… 視線をわざと外して、焦らすように思案に耽るフリをする ――名前を呼んで頂戴」 七曜の魔女 パチュリー・ノーレッジではない 全ての衣を脱ぎ捨てた 一人の女の名前を呼んで欲しい なんか猫をイメージしたらこうなった うpろだ0030 大図書館にて トントンガチャ 「おう図書館の使い魔さんや」 不躾にドアを開け、叫ぶ 「は~い」 ふよふよと羽の生えた女の子が飛んでくる 「なんでしょう○○さん」 「小悪魔、パチュリーは何処だ」 「ご主人様なら……先程お嬢様と一緒に人里へ出かけられたかと」 「よし、手伝え」 「え?えぇ~?」 小悪魔の手を引っ張り図書館の奥へ引きずる ~大図書館奥~ 「成程、日頃のご主人様への態度が喧嘩以来素っ気無くなっているので今日を機に……ですか」 「あぁ、ハロウィンマジックでも起きやしないかなと思ってな 「で、喧嘩の内容と言うのは?」 「ん、えー……っとなぁ……」 痛い所を突かれた、まぁ普通に考えて触れるよな、うん 「こないだ服を持ってきたんだよ」 「着替えではなく普段着として、ですか?」 「あぁ、そしたら思い入れのある服を脱げるかーなんだの言われて」 「そこから口論に?」 「口論と言われれば何とも言えんが……ま、そんな感じ」 センスが問われるのでアリスさんや東風谷さんに見せ、OKを貰ったんだけどなぁ 「ひとつ伺いますけど、○○さんはその時自分が悪いと思いましたか?」 「いや、全然」 「……はぁ」 『やれやれこの人全然ダメだわ』風な動作と共に首を振って溜息をつく、と同時に勢いよく机を叩く バァン 「○○さん!貴方には誠意が足りないんですよ!誠意が!」 「どした?小悪魔」 真剣な表情で口を開く 「○○さん、貴方大図書館に来ていませんよね?喧嘩以来一切」 「なんか行きづらくてな……」 「じゃあ聞きますけど!この前の喧嘩はどっちが悪いんですか?」 「え、えぇと……」 言われてこの間のやりとりを思い出してみる 『おーいパチュリー、新しい服持ってきたぞー』 『……どんな服?』 気になっているようだが、読んでいる本から目を離さない 『香霖堂での掘り出し物で割と安価で買えてな』 ごそごそと手に持った紙袋から取り出し、パチュリーの目の前に置く 『真っ白なワンピース……』 本を置き、手に取ってじっくりと見ている 『どうだ?パチュリーなら似合うと思って買ってきたんだけど』 『ん~……これがあるからいい』 自分の着ているいつもの服を引っ張りながら言う 『こっちは着慣れて思い出もあるから。後そっちは露出が……』 『そか、じゃあこれは売っちゃうか』 言った瞬間パチュリーの表情は曇り、読書を再開する 『……好きにしなさい』 『何だよ、買ってこない方が良かったのか?』 急に不機嫌になったパチュリーを見て少し苛立つ 『……知らない』 『あぁそうかい、今後金輪際買って来ないから安心しな』 そして強い口調で図書館を後にした 「……思い返すと我ながら一方的だったな」 「ご主人様のあの態度はいつもの事です!勝手にご主人様の感情を決めつけないでください!」 「申し訳ない……」 「謝るのはご主人様にしてください!」 「は、はい」 「……とお説教はここまでにして」 小悪魔は語調を先程の強いものから優しいものへと変え、再び語り出す 「貴方と付き合い始めて日々新しい事で一杯なんです、ご主人様は」 「明日何をしようか、一緒に何ができるか、一つ一つ真剣に考えていらっしゃいます」 「でもこの前の喧嘩から貴方と出会う前のご主人様に戻ってしまいました」 「最近はただ本を読むだけの日々が続いています、恐らく内容は頭に入っていないはずです」 あの大人しい頃のパチュリーか…… 「どうかご主人様を元気にしてあげて下さい。小悪魔からのお願いです」 深々と頭を下げる小悪魔 「……分かった。考え直すと、俺は自分が悪いのに謝りもせず逃げてただけだもんな」 それをイベントで解決しようとするのはズルい気がするけど 「ご主人様は繊細なんです、大事にしてあげて下さいね」 「あぁ!任せとけ!」 顔を上げた小悪魔はいつもの小悪魔だった 「気を取り直して、今日の作戦実行手伝ってもらっていいか?」 「勿論です!全力でお手伝いさせていただきます!」 言うや否やハロウィンパーティの装飾を開始する ~数時間後~ 「さて……あとは」 「ご主人様の帰りを待つだけですね」 普段パチュリーが生活している周辺をハロウィン一色に飾った 「じゃあ後は言われたとおりに頼む、くれぐれも失敗の無い様にな?」 「使い魔を侮らないで下さい!お茶の子さいさいですよ!」 「……心配だから余計に気を遣ってるんだけど」 俺の心配を余所に上機嫌で予行演習を行う小悪魔、頼むから失敗しないでくれよぉ…… 「あ、それと○○さん」 「ん?」 「小悪魔は種族上まだ未熟ですので……ね?」 「ね?じゃねぇよ!」 「頑張るぞー!」 飛び去って行った……失敗する気満々じゃないか?あれ ギィ 「やっべ!」 予想より早く帰って来たので大急ぎで隠れる 「……はぁ」 着くなり溜息か……ん?他に足音? 「どう?人里でリフレッシュできた?」 「少し……ね」 「友人としてできる事はこれくらいだけど、気晴らしにならなかったようね」 「ううん、そんな事は無い。さっきより幾分かは楽になったわ」 「食事も摂らず書籍を読み耽っていたら体に悪いわよ?」 「分かってる」 「ま、大体原因は特定できてるけど」 「……でしょうね」 「○○って奴がこれ以上パチェを苦しめるなら、私は問答無用で」 「レミィ」 「……精々今日が良い所ね、今日現れなかったら咲夜に捕獲してもらうから」 「……」 館の主が友人心配して出てきちゃったよ……やべぇ命日はすぐそこだった 「「じゃ、また明日」」 足音が遠ざかり、ドアの開閉音とともに消えた 「○○……○○……」 しきりに名前を呟くパチュリー 「あーしたーがーめーにちだぞー……」 うん、今さっき知った驚愕の事実だ 「こー……ないとー……」 人間の死神がやって来るらしい 「言っても……来ないか」 自分の机に座るなり顔を伏せてしまう、今が好機と見た パッ 「あら?停電かしら?」 合図をして小悪魔に照明を落とさせる、その間に移動して…… 「小悪魔?居るかしら?電気のスイッチ見て来てくれない?」 パサパサパサ ゴンッ アイツ平気だって言った割にしっかり頭打ってんじゃねぇか! 「いたた~……はい、見てきますね」 パチッ 「ありがとう小悪……魔……」 「や、やはぁ」 パチュリーの真向かい、机の向こう側で声を裏返しつつ挨拶をする 「なっ、どっ、え?」 大体『なんで!どうして!ここに!?』だろうな 「その……えーっと……はぴはろい~ん」 ラッピングした薄紫色の袋を差し出す 「ど、どうもありがと……」 言いたい事を告げて帰る予定にしていたので矢継ぎ早に 「こ、この前の服とささやかなプレゼントだ受け取ってくれそれじゃばいばいっ」 言い終わるや否や脱兎の如く図書館の出口めがけ、だぁっしゅ 「こぁ~ん」 「なっ!?」 ズッサァァァァ 小悪魔の足かけで見事に転んだ 「まーだー謝ってーませんよねー?」 「す……すんません」 そこへパチュリーが駆け寄ってくる 「小悪魔っ!何してるの!」 「自分……未熟ですから……グッバイ!」 矢の如く図書館の奥へ消えて行った小悪魔、アイツ謀ったな…… 「大丈夫だって、こんくらい」 「ダメよ、治療しないと。ここには色んなモノがあるんだから相乗効果で人体爆破もおかしくないの」 「そら……恐ろしいな」 「じっとしてて、痛くても少しは我慢すること」 右手を傷口にかざし何かしら唱え始める 「回復魔法か?」 「間違いじゃないけど、そんな高性能なものじゃないわ。ただの応急手当」 蒼い光が傷口を照らす。見つめるパチュリーは真剣そのものだ 「……こないだはごめんな」 「唐突ね」 表情を変えずに言葉を返す 「それで思ったんだけどさ、普段から可愛いって言うべきだったんだよな」 「……っはぁ!?」 「いやなんだ、普段から褒めてればお前ももっと積極的になれるのかなーと思ってさ」 「こっ、この間のはその……それよりも、よ!」 傷口から手を離すと、ポンと軽く叩かれる 「って!何すんだよ!」 「……遅いのよ……ばか」 「わりぃ、言い出せなかった」 「察するに、自分が悪いと思ってなかったから謝りに来ないんだろうとは思ってたけど?」 「ぐっ……」 「どうやら図星みたいね」 ふっと表情が和らぐパチュリー 「イベント任せで仲直りしようとしたんだがなかなか上手くいかないもんだな」 「今日何かあったかしら?」 「認識してる限りでは他人の家にお菓子を集りに行くイベントだったかと」 「あー……あったわねそんなの」 館内の飾りつけを見ながら思い出すように言うパチュリー 「で?小悪魔と何か企んでたと」 「そこまでお見通しですかい……」 「女のカンは何でもお見通しなんだからね?」 「うっへぇ……」 パチュリーはいつもの元気を取り戻してくれた、よかったよかった 「で、ハロウィンらしいけど貴方仮装は?」 「……こ、これ」 持っていた布切れを差し出す 「ははぁーん、ミイラ男かしら?」 「ご名答。思った以上に早く帰って来たもんだから仮装できなかったんだよ……」 「買い物するような気分じゃなかったものだから早めに切り上げてきたのよ。レミィには悪いと思ってる」 「重ね重ね申し訳ない……」 深く頭を下げる 「迷惑かけた紅魔館の主にも謝っておきたいから今から行ってきていいか?」 「ねぇ……まだハロウィンって終わってないのよね?」 「ん?まだ日付代わってないだろうし……まさか」 「そのまさかよ、ま・さ・か」 「ミイラ男で謝罪とかふざけてるとしか……」 「あら、違うわよ?普通に謝ってきてここに呼んできてほしいの」 「?」 「とりあえず連れてきてくれる?」 「あぁ……」 ハロウィンと紅魔館の主と俺とパチュリー……何だ? ~謝罪後の大図書館~ 「おーい、パチュリー」 「パチェー?何考えてるのー?」 二人して呼ぶが返事がない 「まさかまたアンタ何かしたんじゃないでしょうね」 吸血鬼に鋭い眼で睨まれる 「そんなわけないじゃないですか!謝って仲直りしましたって!」 「ふぅーん」 しかし目線は疑いっぱなしだ、とそこへ 「○○さーん、レミリアお嬢様ー。こちらへ来てくれませんかー?」 小悪魔が奥から飛んできた……猫耳を付けて、だ 「おうい小悪魔さんや……その耳は一体」 「?」 なんでそんなこと聞くんですか?みたいな目で返された…… 「似合ってるわよ、小悪魔」 「ありがとうございます!さ、奥へ奥へ」 主の褒め言葉を受け取り奥へ急かす 「何なんでしょうね」 「さぁ、私はさっぱり」 本当に何も知らなそうなので特に追及もせず奥へと進んでいくと 「いらっしゃーい、○○、レミィ」 「……」 「綺麗よ、パチュリー」 絶句したそこには持ってきた服を着たパチュリーの姿が 「着てくれたのか……」 「前も今日も着ないとは言っていないけれど?」 「選んだ俺が言うのも何だけど、パチュリーの魅力が際立ってすっげぇ綺麗だよ」 「……面と向かって綺麗って言われると照れるわね」 肌理細やかな頬をほんのり染めながら言う 「それと……気に入ってくれたか?」 「次はデートの時にでも使わせてもらうわ、ありがとう」 そう言って微笑む……ん?次は? 「小悪魔、日は沈んだかしら?」 「ばぁっちり!」 「じゃ、行きましょうか。トリックオアトリートしに」 「あらパチェ、良い考えじゃない」 「○○さんは仮装してくださいねー」 「……マージでミイラ男するんですか」 「「「もちろんです!」よ」じゃないの」 三人から揃って言われるこの……ねぇ 「着替えたら夜の街へ繰り出すぞー!」 この吸血鬼、ノリノリである。聞いてはいたがほんとイベント好きなんだなぁ ~ミイラ男誕生中~ 「揃ったわね?まずは神社よー!」 館から出るなり勢いよく空を飛ぶ主、こちとら一人徒歩だってのに…… 「○○、見える?」 横に居たパチュリーが心配そうに声をかけてくれた 「館内でふらついてたから心配で……」 「一応な、ただかなり暗くなってるし明かりが要るかも」 「そ、まぁ安心なさい」 スッと腕を組んでくるパチュリー 「今日までに話したい事……たくさんあったんだからね」 「了解、話に夢中になり過ぎて躓くなよ?」 「大丈夫よ、今は貴方が居るんだから……」 俺はパチュリーの肩を優しく抱いて神社へ向けて歩き出した そんなハロウィンの夜
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/ `ー、_ 〈 ヾ 、 `⌒\ _ヽ____ ノ | \ r‐く f´ ̄ > >‐―ト、二´_ノ / | ∨ く_´/⌒V-―vく⌒ヽ、 { /⌒V \ ヘr、___x'´ └、___| i l ! / l l l `7 ヽ. く \ 名前 :パチュリー・ノーレッジ | l l | _」__/ | ;イ ナ ァ | Tーハ \ \ ジョブ:錬金術師 "⌒ヽ、ハ|/xく /' x.マ"rリ| | !. \ ヽ、 l ハヘリ ゞ''| l | /lフ´ヽ. | レベル: 2 ./ / ハ' '''' | l ,/ | ソ 戦力 : 12 / / ;> 、`’,. ィ_,,| / |/ ! ./ / ノ^ヘ r'⌒./ /、 | スキル: / / にフト、フ / / l∨ | 【博識】 いろいろ知っている. 〈 ト、 レ/レ'/ /‐r. 〉 ! 【魔法Lv1】 基礎的なマナ管理、魔法生物の精製、 ヽ /〈. /// / -、 Tソ | マナの探知、攻防魔法などが使える。 V ‐く //、{ / | i 【火符「アグニシャイン」】 く/ 「ノ| 〉′/ >rイ , 「 フr''"| ! ≪大魔法≫儀式ターン、フィールド上のFOEをファイヤボルトで攻撃 /77 { 7 く/ ヘ_〉 V⌒ヽ| | 使用マナ*20戦力のダメージを与える。 r‐「^/// / / / /| | | /7 |.///l / / / ,' | | | 感情: .//7./// ! { ,′ i / | | | やる夫に忠誠3 ///'///にフトく ' rく. | | | 約束: .///,〈〈〈_/ トノ く_/ ト、ゝ | | l 直接戦闘に参加しない \\.\\l ! | | ハ. ', ! \√にfV ハ / / '、 | く_/^フ′ }/ ,′ ヽ ; | `^/ / | | V |
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autolink TH-665 カード名:ニャチュリー 読み:にゃちゅりー カテゴリ:キャラクター 属性:花 EX:花2 コスト:花 登場位置: --- ●●● AP:2 DP:2 SP:3 陣営:紅魔館 基本能力: 特殊能力: 手乗りパチュリー 持ち主が相手の効果によって自分の手札のこのキャラが破棄されたとき、このキャラを持ち主の手札に入れることができる。 ターン終了時まで自分の「手乗りパチュリー」は処理されない。 ※このキャラは「パチュリー・ノーレッジ」と同姓同名として扱う。 性別:女 レアリティ:P illust:葉月るぅ
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パチュリー あだ名:パッチェさん 加入場所:Stage40 基本ステータス:HP60、RP140 打撃 本で叩く。打属性。 リーチがあるわけでもなく、威力があるわけでもなく、連射が効くわけでもない。 射撃 通常射撃は水、冷気属性の放水。敵・壁は共に貫通しない。 微妙に放物線を描くばら撒きで、地形や相手次第で使いにくいことも。 上射撃は風属性の竜巻3WAY。ロックマン2のエアーシューター。 敵・壁を共に貫通する。射程は長めだが有限。 下射撃は熱、炎属性の火炎弾7WAY。時計回りに広がり、壁を貫通する。敵に触れると炸裂。 密着撃ちすると7発同時ヒットで高火力。射程無限。 チャージアタック サマーレッド!大チルの天敵である。溜め時間で弾速が違う。 能力 魔法耐性! 打撃以外の全耐性UP 総評 案の定、足が最も遅い。距離をとって戦うのが得意だが物理に弱い。 ボスの体当たりとか致命的。避けて逃げて離れるか、他のキャラに代わってもらおう。 上空から一方的に攻撃されがちなボス戦でも、撃ち合いの勝負が可能。 三姉妹戦にも適性があり、いろいろ便利。楽にクリアしたい場合の強化対象候補。
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霊夢 対 パチュリー 霊夢側 パチュリー側 名前 コメント